平田オリザ氏が学長を務める、全国初の演劇を本格的に学べる国公立大「国際観光芸術専門職大学(仮称)」の設立を発表。
ニュースなどで「全国初の演劇専門の国公立!」「平田オリザ氏が学長をつとめる」と色々なところで話題になっています。
演劇学ぶ初の国公立大、兵庫に 21年度開校へ基本構想案発表 学長に平田オリザさん
「観光芸術大」構想 豊岡に育て演劇人 2021年春開学目指す /兵庫
学長に作家の平田オリザ氏…兵庫・豊岡に4年制の県立専門職大学が開学へ
平田オリザさんといえば劇団、「青年団」の主宰者であり、「現代口語演劇理論」で、演劇界に多大な影響を与え、日本の演劇界をリードしてきた方です。
では、国際観光芸術専門職大学について、どこにあるのか、何を教えてくれるのか記事を基にを調べてみました。
1.普通の大学とは違う、専門職大学
平田オリザ氏が開校する国際観光芸術専門職大学ですが、これは、大学、短期大学とは違ったものです。
2017年度に改正教育法が可決、2019年4月より開設される予定なので、専門職大学はまだ一校も開校されてないのです。
専門職大学(せんもんしょくだいがく)とは、日本の職業大学。四年制大学及び短期大学とは異なり、実習や実験等を重視した即戦力となりうる人材の育成を目指す目的で設置される
なので、国際観光芸術専門職大学は演劇分野での実習を重視した初の専門職大学です。
演劇が学べる初の国公立というより、演劇が学べる初の専門職大学という言い方が正しいですね。
2.国際観光芸術専門職大学について
・開校や大学理念について
2019年の秋に文科省に申請、2021年に開校する予定で、定員は80名、原則全寮制でした。追記の情報として
開学時期:平成 33 年(2021 年)4 月を目標
定員:入学定員 80 人、収容定員320 人
学部学科名称:文化・観光創造学部文化・観光創造学科(仮称)
大学理念
舞台芸術の学修で得た能力を基礎として、地域と協働し、多彩な地域資源を活かし、芸術文化を通じた新たな価値を創造できる専門職業人材を育成するとともに、イノベーションで地域課題を解決するプラットフォーム機能を発揮し、地域の発展と繁栄、ひいては世界に貢献する大学を目指す。
・場所
豊岡市山王町の商業施設跡から推測すると、おそらくこのあたりではないかと。
場所、位置図の決定したものが出ました。
・設備
総事業費は約80億円で総事業費が約 67 億円、教室以外に、劇場やスタジオなどを設けて近くに学生寮の建設も予定されています。
予定では、大学学舎には本館棟と実習棟の二つが整備され、本館棟には教室、演習室、図書館など
実習棟には劇場やスタジオが整備されています。
商業施設の大きさと定員数から、劇場、スタジオ教室、学生寮がほぼ一か所に集まる感じでしょうか。
学生寮は交流スペースやランドリールームなどが置かれているそうです。
以下の理由により学生寮を整備。
・ 但馬地域には民間を含め賃貸住宅が非常に少なく、学生確保のために必要
・ 教学面から、1 年次全寮制とし、反転授業の場、留学生との交流の場として活用
全寮制なのは決定ですね。
建築のスケジュールですが、
平成30 年11 月~平成31 年 8 月 基本・実施設計
平成31 年(2019 年)10 月~平成 32 年(2020 年)12 月 建設工事
平成33 年(2021 年)4月 開校
というわけで、2020年の12月に施設が完成するそうです。
・学科と内容
1学部1学科のみで、2年目からコース選択となるそうです
1年目
文化・観光創造学部文化・観光創造学科(仮称)
全員が配役を得て舞台上で演じる「演劇コミュニケーション演習」を行い、集団生活と演劇を通して実社会に必要なコミュニケーション力を身につけるとのことです。
2年目以降
1.観光地経営コース
主に観光マネジメントや経営を学び、観光プランナーやホテルマネージャーへの育成コースになる予定。
2.文化創造コース
アートマネジメントや演劇を学び、公演企画者、舞台演出家、俳優などの育成コースになる予定。
・その他の実習など
・全員海外留学を体験する予定
・学内に設置された「地域リサーチ&イノベーションセンター(仮称)」で地域住民と一緒にインバウンドの誘致などに取り組む
・県内のホテルや旅館、劇場での実習
・地元で開催予定の国際演劇・芸術祭の企画・運営に携わる
・城崎国際アートセンターに来場する海外アーティストの滞在支援
などなど、外部研修について、演劇に関わるもの、地域の活性化に関するものなど多彩です。
・卒業後の進路について
観光地経営コースは、ホテルマネジャーや観光プランナーなど
文化創造コースは俳優、舞台演出家、公演企画者などの予定です。
・なぜ豊岡に開校するのか
平田オリザ氏は、2015年から芸術文化参与を務めており、演劇を用いたコミュニケーション教育が、市内の全小中学校に導入されているほどです。2017年にはインタビューで
「豊岡には高級旅館、いろんなスポーツ、環境、食があり、ここに文化が加わると富裕層が来る。アートといろんなものを結び付ける企画力がある人材を専門職大学で育てたい」
劇団を豊岡へ 2年後、本人も移住 地元講演で意向 企画力ある人づくりを /兵庫
と語っており、平田氏が主宰する劇団青年団も2020年をめどに、劇団の本社機能を豊岡に移転することを決めております。
また2022年には豊岡市で国際演劇祭の開催を目指しており、今回の国際観光芸術専門職大学の開校は、それを見据え、豊岡を芸術文化の国際拠点にする第一歩として考えているのではないかと思います。
・東京のコストの高さと豊岡での演劇需要
主宰劇団と自身、拠点を兵庫・豊岡に 首都圏偏重、対案を示す 世界と戦える文化的インフラと土壌
「都会は消費の場であって、創作の場ではない。生活費などのコストも高く、俳優も疲弊する。自分自身も今後の人生を考えた時、地方に拠点を置いた方が生産性が上がるのではないかと考えました」
「東京で活動しないと評価されないのが今の演劇界。従来の演劇祭は有名どころを集めることが中心でしたが、ヨーロッパなどでは『フリンジ』と呼ばれる自主参加の比重が大きい。そうした演劇祭を豊岡で開くことで、東京とは別のマーケットを作りたい」
豊岡市では、平田氏オリザ氏が中心となり、演劇を活用したコミュニケーションに力を入れており、ベテランから若い俳優まで活躍の機会が非常に多いそうです。
また上記のインタビューから、東京という一極集中ではなく、地方にも受け皿を作るという狙いもあるのではないかと思います。
井戸敏三知事も
「但馬地方は4年制大学がないことが地域の課題だった。観光分野の専門家も少なく、人材育成のニーズがあった」
とのことで、豊岡市を芸術文化の国際拠点にする上での人材育成の狙いもあるのではないかと思います。
・なぜ大学を作るのか
2019年12月19日の作家LIVEにて、その考えを少しだけ話してくださいました。
平田オリザさん「例えばアメリカの大学の学生は、研究に煮詰まると、本物のピカソなどを見て心を慰めるんです。日本だと、大学にそういう心を慰める場所が無いんです。日本では、心を鍛えるところが少ないのです。それで兵庫県に大学を作るんです。」
また、日本では、シアターが少なく、「観る、観られる」といった関係をちゃんと構築したいというお話もありました。
おわりに
これから文科省に申請し、2021年に開校するということで、まだまだこれからいろいろな情報が出てくると思います。
シナリオクラブも演劇を教えるカルチャー教室として、これからも新しい情報を追っていきたいと思います。