大成功!第6回発表会『岸田國士の短篇集たち』! 感動のルポ

9月28日に武蔵野芸能劇場にて行なわれた、シナリオクラブ第6回発表会。
『岸田國士の短篇集たち』
大盛況のなか幕を閉じることができました。

ご来場いただき、温かく応援してくださった皆々さま、本当にありがとうございました。ご来場の皆さまからは、たくさんのお褒めのお言葉をいただき、この日のために頑張ってきた出演者の皆さんも、感慨もひとしおだったことと思います。

第1部のドラマリーディング、第2部のドラマメイキング、終わってしまえばあっという間でしたが、劇場入りからたった3日、とても中身の濃い日々でした。

それでは。その前日にさかのぼって、青柳から見た発表会をご報告したいと思います。

第6回発表会、ドキュメント第1弾!9月27日。劇場入り2日目。

この日は、午前中、照明の仕込みなどがあったため、午後からの練習となっておりました。まず「場当たり」。今回は、場面転換が12回もあり、そのほか音響照明のキッカケも多く、そのキッカケを中心に稽古を行ないました。通常、「中抜き」と言って、演技は飛ばし飛ばしで、キッカケのところだけ練習をします。つまり、キッカケが多ければ多いほど、時間がかかるのですね。

いやー、思ったより、2時間くらいオーバーしちゃいました!(いやはや  )しかし、これをやらないとゲネプロができません。とはいえ、刻々と過ぎていく時計をハラハラしながら見つめ。

まずはドラマリーディング(以下リーディング)の部、そしてドラマメイキング(以下メイキング)の部と2本やらなければ!明日を迎えることができません。でも、2つともやったら、メイキングのゲネプロが終わるの、22時過ぎちゃうよー。どーする、どーする・・・となったのですが、皆さんの強いご希望により、バッチリ2つともやることになりました。

スタッフにとっては、正直、助かりました。リーディングとメイキングは演目は一緒でも、キッカケがだいぶ違いますし。リーディングでは早替えがあるし。メイキングは食事シーンもあるし。休憩もそこそこに、リーディングのゲネプロがスタート!

転換も回数を重ねるごとに上手くなって、セリフも劇場に慣れてきたせいか、どんどん声にハリが出てきて。舞台袖から観ていたわたくしは、けっこう物語の世界にどんどん引き込まれ、吹き出しちゃったり、涙があふれてきたりしてました。「岸田國士戯曲と、清家演出が融合してきたのを、目の当たりに」みたいな瞬間だったのかもしれません。

出演者の方たちもこの限られた時間で、本当にスゴい集中力!と思いました。日頃から、上手いなあ。と思っている方々ですが、この「会員さん」たちがわたくしにとって「役者さん」に変わっていきました。そうそう、今回は、エンディングに限っては、リーディングの時はメイキングの人も、メイキングの時はリーディングの人も舞台に特別出演する演出でした。このエンディングがまた面白くて!「わー」ってなって、「やんや、やんやー」って感じでクライマックスがやって来るのです!

観てくださったお客様から、「自分も参加している気分になった」という感想をいくつかいただき、なんだか、とっても嬉しい気分になりました。そして、メイキングのゲネプロ!!!こちらの部は、チーム毎に毎週毎週、練習を重ねてきているので、毎回磨かれていったものが、成熟したものとなっているのがすごく実感できました。例えば、面白いセリフやシーンがあったとしたら、それをどうやったらさらに面白くできるか、面白く見せられるか研究する時間もリーディングより多く、とことん突き詰めてきているわけで。「笑ってしまう」のではなくて、きっと「笑わされている」のだと思いました。もう、そのシーンが、来る来る、って思うだけで、可笑しくなってしまっていました。

そして、大爆笑の後には、大号泣・・・「わー。やんや、やんやー」ってなるから、自然に笑顔になれて。最高のお芝居になったなあ。って感動でした。って言っても、「終電がなくなるう!」っていう方もいて、感慨深くなってる場合ではなかったのですが。やっぱりやってよかったです、ゲネプロ。この日安心して帰れるのと、不安のまま帰るのでは雲泥の差・・・だったかもしれない!

清家さんも、「上手くいっちゃったね。何も言うことはないです。」と満足げ。そして、今回は清家さん自らプロンプターをやってくださることになっており、最前列に座ることが決定していましたので、「いざとなったら、僕が助けに行きますからね。」と優しいお言葉もかけていただきました。わたくしもちょっと嬉しく、明日を迎えるのが楽しみになって、この日の劇場での稽古が終わったのでした。

いよいよ本番!

前日のリハーサルは22時過ぎまでかかってしまい、帰りの電車の時間もあって、皆さんババっと解散となりましたが、この日はドラマリーディングの部から、ということで、リーディングの皆さんは、10時前には元気にお集まりでした。わたくしも、タウリンを補充して、本番に臨みます!今回は、皆さんの衣裳は和服が多いもので、日舞の師匠と、そのお弟子さんに着付をお願いしました。(日舞の師匠は第2部の出演者でもある!)それに伴い、メイクも和服に合わせて、ってことで、ビューティーアドバイザーの会員さんと、その師匠が、メイクを手伝ってくださいました。いつもより、楽屋が楽屋っぽい!すごい活気ですっ!こういう準備も、気合が入るというか、テンションが上がります!もう昨日のリハーサル通りにやってくだされば、演技は申し分ないわけで・・・

でもわたくし、この日のスケジュール、第1部と第2部のあいだが短いことがすごく不安でして、11時に開演したら、第2部の終了の17時まで、ノンストップなのだと思うと、わたくしは始まる前、すごくドキドキでした。でも!この日スタッフとして手伝ってくださる会員さんや、仲間もいるわけでして、皆さんを信じて、いざ!!!

開場になると、お客様や、お花や差し入れなどぞくぞくと受付に並んでいきました。皆さま、いつも応援まことにありがとうございます。舞台の上には、楽屋風景。セリフをぶつぶつ言ってる人、着付してもらってる(風の)人、メイクをしてもらってる(風の)人、蓄音機を回している人・・・。これが今回の、清家さん流のお客様へのおもてなしです!開演時間は5分押しで、音楽が始まり、いよいよ本番スタート!!!!!

いよいよ発表

9月28日、11時30分。さて、いよいよ始まったドラマリーディングの部!「犬は鎖に繋ぐべからず」英語教師と、元・教え子の夫婦と、その一人息子と、そして自由な飼い犬・ペス(放し飼い)の家族のお話。この一人息子もだが、さらにこの飼い犬・ペスが、いろんな事件を巻き起こしてしまい、それに翻弄されまくる夫婦。この夫婦役の方たちは、普段からとても演技力もあり、そのうえ華があって上品な方々なので、非常に舞台が華やかでした!まさに、大正ロマンって感じでした!

「留守」

別々の家に奉公する、二人のお女中さん。それぞれの家主の留守中に、羽を伸ばし、油を売っている二人。そこに近所の八百屋さんもやってきて・・・というお話。このお話は、今回の作品のラインナップのなかで、特に何ら事件が起こらない、演劇的には難しいお話だったかと。強いて言うなら、この八百屋さんが大勘違いして、女中さんの一人に告白しちゃうことくらい。ふたりのお女中さんの丁々発止と、
八百屋さんの大勘違いっぷりが、大爆笑を誘いました!

「驟雨」

倦怠期の夫婦のもとに、新婚旅行に行っているはずの妻の妹が、ひょっこり舞い戻ってくる・・・!っていうお話。堅実な姉と、自由奔放な妹。あー、こういう兄弟姉妹関係、あるある!っていう関係なのですが、本当によくその関係が表現されてたなあって感動でした。この妹さん役の方、発表会初参加なのですが、普段の様子とまったく別人で、役に入ると、本当にパワーアップするんです!

でも、このデフォルメ気味にグイグイ迫る感じに対し、姉さん役の、これまた発表会初参加の方なんですが、軽くいなして、何とか丸く収めようっていうやり取りが、本当の姉妹のやり取りみたいに自然でとってもリアリティがありました!

そんななか、このやり取りに我関せずの、女中さん。と、姉さんの夫(妹にとっては義兄)。が、同一人物のキャスティング!とぼけた感じの女中さんと、優しいお義兄さんを、しっかり演じ分けていらっしゃいました。

(注:これはリハーサルの時のものです。実際はお着物でした)

「ここに弟あり」

上京して、音楽家を目指している弟。といっても、今で言う「ニート」な弟は、10歳はなれたお兄さんから仕送りしてもらっているくせに、女の子と同棲していることをお兄さんに知らせていない。そのお兄さんが田舎から、今日上京してくるという・・・!「驟雨」が姉妹のお話なら、「ここに弟あり」は兄弟のお話。このダメダメな弟は、女の子にはいいところを見せたい!と、兄貴に精一杯、いきがってみせる。が、話にならんと結局ジャマにされ、蚊帳の外に追いやられ。っていう、かなりKY(空気を読めない)な弟役を演じたのは女性、会員さんのなかでも「カッコイイ!」と、ファンの多い方なのですが、これがまた、KYなんだけど、カッコイイんです!

お兄さん役は、先ほどの「驟雨」のお姉さん役が、見事な早替えで!厳しいことを言いながら、実は弟想いっていう優しさを、絶妙に表現されてました。この同棲中の女の子は、さっきの「犬は鎖に繋ぐべからず」の息子役が、こちらも早替えで変身!とてもキュートに演じてくださいました!

「葉桜」

初めて読んだときから、大好きな戯曲でした。母と娘の二人の会話劇。娘が適齢期となり、お見合いをした。たぶん夫に先立たれてて、母ひとり娘ひとりの、二人だけの家族。お見合い相手とは、おそらくいい感じなのに、母ひとり残していくこと、それを言い出すことに、ためらってる娘。母はそんな娘の気持ちを知ってるのか、確かめようとしてるのか、「断っちゃえば」とか娘に揺さぶりをかける。

っていう、お母さんの気持ちがめちゃくちゃ伝わってきて、かつ、清家さんの演出もすっごく効いてて、なんか舞台袖で号泣してました。ずるいです、清家さん!

そして、また「犬は鎖に繋ぐべからず」のお話に戻っていく。この構成が絶妙に上手くて、ホント涙の後に、笑いがやって来る感じなんです。最終場面、ご近所中の住民たちを勝手に集めて、近隣住民会議を開催する、百瀬鬼骨(ももせ・きこつ)なる人物。お互いに心を開いて、言いたいことを言い合えば、困っていることはなくなり、陰口もなくなる・・・などと能天気なことを言う。そんな一筋縄でいくわけないので、住民たちはヒートアップし、収集がつかなくなって・・・っていうところで幕。

この百瀬鬼骨は、良かれと思うことはすぐ実行してしまう行動派(突っ走るタイプ)のため、ノリツッコミとも思えるセリフの数々が、もうこれでもかと、笑いの雨となって降って来るのでした!

という、最高の盛り上がりで、第1部がカーテンコールを迎えました。

休憩も含め、2時間15分くらいでしたが、前日のゲネプロの時よりテンポアップしてたし、爽やかな疾走感が駆け巡ったリーディングの部、大きな拍手と感動の声のなか、幕を閉じることができました。

さて!第1部が終わったと思ったら、あっという間に第2部が始まります。

実は、第1部は予定していた演目が増えたため、少々長くなってしまい、第2部の開場までわずかな時間しかなかったのです。ロビーは観終わったお客様と、これから観てくださるお客様でごった返し・・・(あせるスタッフたち

なんとか開場できる状態(ここまでに開場10分押し)にして、「大変お待たせいたしましたーーー」と言って、ノンストップで、第2部が始まっていきました・・・

「犬は鎖に繋ぐべからず」

第1部はドラマリーディング(台本を持って演じる。以下「リーディング」)の部でしたが、第2部はドラマメイキング(セリフを覚えて演じる。以下「メイキング」)の部です。リーディングの「犬は鎖に・・・」が、めちゃくちゃ大正ロマンだったのに対し、こちらのメイキングは、着物こそ着てらっしゃるものの、とってもモダンな感じでした。というのも、この夫婦役、とっても奥さんの方が強そう。旦那さん役のハリのある声、そして二人のコミカルな演技、岸田國士の世界は今でも全然古くなくて、むしろ新しく輝かせてくださった!と思いました。(そう思いませんか、岸田さん!)

「留守」

このお女中さんたちの丁々発止のやり取り、こちらのメイキングの方はより「江戸っ子」っぽさがより出ていて、こんな会話、本当に昔、どこかにあったかもしれない、って思えるリアリティがありました。おおらかだけど、どこか適当っぽいお女中さんが、もう一人のお女中さんにちょっと悪いことしちゃったお詫びのしるしにと、出前のお寿司をおごってみんなで食べる。っていうところで終わるんですが、
八百屋さんが本当に喉にお寿司を詰まらせるアクシデント!あれっ、セリフは???と思っても全然出て来ない!確かに、気持ちがモヤモヤして胸がつかえて、食べ物が喉を通らない、というシーンでしたが、これはヒヤリとしました。が、場内は大爆笑だったので、よしとしましょう。(舞台袖も、ですが

「驟雨」

このメイキングでの驟雨チームは、チームが集結したときから、すでに完成形が見えていたと言っていいほど、役にピッタリな方々で構成されていました。新婚旅行先から帰って来てしまう妹、なんとか離婚を思いとどまらせようとする姉、妹の夫の気持ちを代弁してみせる義理の兄、自分の目のことばかり気にする女中さん。完璧に作品として成り立っていましたので、最後、雨がザーッと降って来て、妹が足止めされるところ、胸がキューっとなりました。

「ここに弟あり」

こちらのメイキングの弟役は、発表会初参加なのですが、山形から新幹線で来てくださってるんです。その山形訛りが、すっごくいいんです!同棲中の女の子は、こちらも初参加ながら、セリフに、なんだろう、色気みたいのがあって、といってベタベタしてるわけではなく、この弟くんとラブラブなのが、とっても微笑ましい。対する、田舎から出て来たお兄さん、弟くんを小さい頃から大事に思ってる弟想いなところ、最初は反対してた同棲だけど、最後には理解を示すところ、すっごくあったかくって、ジーンとしました今まで観てきたどの練習より、今日この日の演技は素晴らしかったです!

「葉桜」

わたくしにとって、第2部のこの作品がいちばんのヤマ場でした。(調理アンド食事をしながら演技をするという・・・)思えば、最初の読み合わせのすぐ後、清家さんが、感想とかアドバイスとか何よりもまず、「すいとん、作れます?」って言ったのが、ものすごーく耳に焼きついています。なんで、すいとん???これの答えは、打ち上げの時、娘役を演じた方が、「きっと清家さんにとって、お母さまとの想い出が、すいとんに込められていたのでしょう」とおっしゃいました。

きっとそうだったんだろうなあ、と胸のつかえが取れ、ジーンとしてしまい、余計に心に残る作品となりました。舞台上で作るすいとんが湯気を立てて、ホワーっとなって、会場中をあったかい空気に包んでくれました (まあ、劇場では反則技に近い演出だったみたいですが・・・)最高に攻めた清家演出の、真骨頂でした!娘の旅立ちに、会場からすすり泣きもチラホラ聞こえましたね。(やりましたね!清家さん!)

「ヂアロオグ・プランタニエ」

性格の違う女の子が、同じ男の子を好きに・・・!二人の心が揺れ動く、岸田戯曲の珠玉の作品。これも、清家演出では、花びらをむしる代わりに、ジャガイモをむくという・・・常に先手を打ってくる積極的な女の子と、最初はその攻撃を受けてタジタジしちゃう消極的な女の子。でも対話しているうちに、だんだん形勢逆転してくるところなんかは、背中がゾワゾワしちゃうくらいでした!(女ってコワイ!)

そして物語は最初の「犬は鎖に繋ぐべからず」へ!近隣住民会議のカオスに突入し、第2部も大盛り上がりのなかカーテンコールへ!!!

とまあ、書きたいことは山ほどありますが、そんなこんなで、2部とも大成功のうちに幕を閉じることができました。1部と2部両方観てくださった方もけっこういらっしゃいました。それぞれの良さがあって、本当に2部とも大成功だったと自負しております。でも、それもこれも、支えてくださるお客様あってこそ。(出演者を支えてくださったご家族も)本当に、本当に、心から感謝申し上げます。
本当にありがとうございました。

さ、そしてっ!衣裳・小道具など、大荷物もパパッと片付け、後はお楽しみの打ち上げへーーー!!!

この3日間から解放された面々は、笑顔、笑顔、そして涙!!!離れがたくなった仲間たち。この日の夜は、いつまでもいつまでも続いてほしかったなあ 

夢のような日々を皆さまありがとうございました。みんなの笑顔をつくってくれた清家さん、羽子田さんも、協力を惜しまなかった角間さん、平尾さんも、多摩美名誉教授の福島先生も、もちろん岸田國士先生も、ケラリーノ・サンドロヴィッチ先生も、本当に、本当にありがとうございました。それでは皆さま、次の発表会でお会いいたしましょう!!!!!

スタッフブログに戻る