こんにちは。スタッフの竹森です。
最近、少年ジャンプのアクタージュという漫画に蜷川幸雄さんをモデルにした人が出てきて、「ほほう。」と思いながら読んでます。
この作品は、すごくざっくり言うと、異質な演劇の才能を持つ主人公が、鬼才と呼ばれる映画監督に見いだされ、女優として成長していく話です。
【祝重版】「アクタージュ act-age」コミックス売上好調につき1・2巻ともに発売即大重版決定してます!店頭では品薄状態ですが7月中には出来予定です!軽くイラストくださいとお願いしたら、千世子描くの楽しくなってカラーまで塗ってしまったという宇佐崎先生ありがとうございます。3巻は8/3発売!! pic.twitter.com/4cgBOU3sz4
— 少年ジャンプ編集部 (@jump_henshubu) 2018年7月10日
バトル漫画!!スポーツ漫画!!という少年ジャンプの王道から外れた、珍しい演劇の漫画です。左の子が主人公の夜凪景。連載初期は異質な才能と破滅的な部分をあわせもつ天才キャラが、だんだんとポンコツ天然努力キャラなっていくのが見てて面白い!!
作品内では、役に没入しすぎて本番中に嘔吐したり、監督から「ブルドーザー」みたいな役者と言われたり、色々やらかしながら成長していきます。
今は映画撮影編が終わり、舞台俳優編に突入!!おそらく蜷川幸雄さんや藤原竜也さんをモデルにしたんじゃないかなというキャラが出て、だんだんと面白くなっていってます。
(2018年8月の時点で三巻まで出てます。)
しかし、作中で出てくる、独学で身に着けたメソッド演技法や、一瞬で役に憑依する主人公のすごさが、すごいんだけど、どれくらい凄いか分からない!
というわけで、そのすごさを演劇歴何十年もやってきているメンターの羽子田さん、清家さんに聞いてみました。
・改めてメンター紹介
清家栄一
蜷川幸雄氏とは40年間の付き合いがあり、舞台俳優として何十年も舞台に立ち続ける大ベテラン。
羽子田洋子
同じく舞台俳優として何十年間も舞台に立ち続ける俳優。
おそらく、藤原竜也さんと初めて共演した女優。
・メソット演技法がいまいちわからない
主人公はある事情から、メソッド演技法を独学で身につけていますが、メソット演技法って何ですか?
これは別の呼び方としてスタニスラフスキー・システムと呼ばれる技法ですね。
ものすごく簡単に言うと、リアルに感情を作る方法で、映画で言うと、「グリーンマイル」の最後のシーンで看守が涙と鼻水を流して号泣するシーンがあるでしょう。あれくらい感情を徹底的にリアルに作る感じですね。
名優アルパチーノや20世紀最高の俳優マーロンブランド、日本だと松田優作さんがこのスタニスラフスキーですよね。
この技法って、同じ経験をするわけじゃなくて、役に共感することで似たような経験や感情が引き出されるんです。
これって「なろうなろう」と思ってできるわけじゃなくて、役によって普段抑えつけていた感情が引き出されて、自然に涙が出てきたりとかして、演劇の醍醐味になる体験でもあります。
ただ、それ一本で何でもできるわけでもないんです。ビートたけしさんは「日本の演劇人はいまだにスタニスラフスキーという幽霊に踊らされている」といって、映画で全然違う方法で撮ってますよね。蜷川さんもスタニスラフスキーだけでは長所も短所もあるからそれだけじゃダメでもっと幅広く持てと言ってましたから。
とても主観的な演技なので、客観的な演技という意味ではブレヒトの演劇の異化効果がその対極に近いかも。市原悦子さんの演技がその代表格で、「いまそこでこういうことが起きたのよ!」って演じますから。
これ一本で全部OKの万能包丁的ではないんですね。
この技法、本気で突き詰めると危うい面もあるんですよ。
松田優作さんは「野獣死す」で足を切って5センチほど短くしようか、本気で悩んでましたからね。
ダークナイトのジョーカー役、ヒースレジャーは亡くなりましたからね..リスキーすぎる…
・主人公はどれだけ天才なのか
メソッド演技法について分かったのですが、主人公がすごいのはわかるけど、天才度合が分からないんですよ。
この技法、演劇未経験で身についたりできたりするんです?
才能は関係するかもしれないけど訓練なしではまずありえないでしょう。
演劇未経験で最初からこれができる人とか今まで見たことない・・・
まあ、流石にそこは漫画ですからね・・・じゃあ、主人公みたいに映画を見て追体験して学ぶってことはあるんですか?。
いい映画を見て、真似したくなることはあります。でも、自分の内面に役があるからできるわけで、演劇経験なしで何でもできるのは紛れもなく天才です。
やはり天才か・・・
ちなみに俳優の人で、この主人公みたいに一瞬で没入するスキルを持つ人っているんですか?
役が憑依するような人は時々いますね。
思い込んで憑依するタイプはいますよ。ただ、キャラを肉付けする中で、憑依することはあるけど、いつもできるわけじゃないんですよね。以前できたから、次にもう一回やろうとしてそんなに簡単にいきませんよ。毎回それが一発でできるならやっぱり主人公は天才ですよね。
スポーツでいう「ゾーン」にいつでも入れるってことか。強すぎる・・・・
でも、さっきも言ったけど万能のツールではないんですよ。憑依型はハマるとすごくいいけど、ハマらなかった時は大変ですよ。
お芝居って相手役がいるじゃないですか。ハマらなかったら一人だけ別の世界にいって周りが置いてけぼりですからね。周りとの世界観を無視して、自分だけの世界観に入ると大変ですよ。相手がいて成り立つ芝居の中で、相手を関係なしにしちゃうからね。
作品の中でも最初は主人公がエキストラ役で出た時に周囲を振り回したりしてます。
ハマらないと、一人でいい気持になってナルシズムに酔ってるように見えちゃうんですよね。周りから見ると「あいつ何してんだ」ってなります。
お芝居って相手役の呼吸と合わせて客観的に見えるようにやりますからね。一人でなりきりだけだと難しいです。
なるほど。天才だけど、ピーキーなんですね。
※ピーキー ある限定的な範囲では非常に高い性能を発揮するが、その範囲外の場合は性能が低い
・3巻からの舞台俳優編について
3巻から舞台俳優編に入りました。
結構真剣に読むお二人
モデルかどうかわからないけど、世間が見る蜷川さんの印象ってこんな感じなのかな。
怒ってるとこばっか撮られるもんだから、世間的には怒ってるキャラ扱いされてて、蜷川さんも「怒鳴っているとこばかりとって編集しないでほしいよな」といってましたね。僕の知る蜷川さんは知性に溢れてました。ただ蜷川さんは怒るときは本気で怒ってました。
このクマのシーンすごいですね。モデルが竜也くんかな、流石にクマを獲りにはいかないと思うけど、稽古に入るときの情熱はすごいですよ。
舞台俳優編は4巻以降ですからね。(2018年9月22日の時点で既刊3巻まで)
流し読みで読んでたんですが、面白そうなのでこの漫画借りていっていいですか?
僕も後でじっくり読ませてもらいます。
・まとめ
というわけで、ベテラン俳優さんに解説してもらって、主人公のスペックの凄さが、僕でもわかるようになりました。
サッカーで例えるなら、パスもシュートもできないけど、ドリブルでガンガン抜いていくみたいな感じかな。
まあ、この例えが正しいのかは分からないけど。
ちなみに、羽子田さんが普段レッスンの中で、会員さんの抑えている感情を少しだけ開放するのも、メソッド演技法に近いものなのかもしれません。
うまい下手を判断したり、教えたりするわけではなく、その方が本来持っている良さや、ご本人も気づいていない本質を引き出すのが使命だと思っています。台本が自身の人生と重なることで、普段封じ込めている感情が出てくるときもあります。
そのきっかけはご自身にもわからない事が多いので、私は色々なアプローチを行います。
メソッド演技法はデメリットがあるそうですが、かなりのレベルに達してからの話かなと。
4巻以降の舞台俳優編がでてきたら、舞台俳優あるあるが絶対あると思う!!
なので、まだまだ連載が続いてほしいなと。
好評だったら続きます!!たぶん・・・
続きました!!