最近、シナリオクラブのプロモーションビデオ動画を作っているスタッフ竹森です。
ですが、どうにもうまくいかない・・・。
動画を作るのがこんなにも難しいとは・・・。こういう時はプロの方に相談をしよう。
ということで、今回、インタビューでいろいろお話をお伺いするのが
「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督です。
大事なことなので、もう一度言います
上田慎一郎監督です。
・「カメラを止めるな!」とは
とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影していた。本物を求める監督は中々OKを出さずテイクは42テイクに達する。そんな中、撮影隊に 本物のゾンビが襲いかかる!大喜びで撮影を続ける監督、次々とゾンビ化していく撮影隊の面々。
”37分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイバル!”……を撮ったヤツらの話。
この「カメラを止めるな!」は、もともと都内で一週間のみの上映予定でしたが、あまりの面白さに、あちこちで話題になり、上映館数が都内2館→100館→全国300館以上で上映されたウルトラ娯楽作です!!
また、日本アカデミー賞で数々の賞を受賞!
最優秀編集賞 上田慎一郎 受賞
話題賞 作品部門 カメラを止めるな! 受賞
優秀作品賞 カメラを止めるな! 受賞
優秀監督賞 上田慎一郎 受賞
優秀脚本賞 上田慎一郎 受賞
優秀主演男優賞 濱津隆之 受賞
優秀撮影賞 曽根剛 受賞
優秀音楽賞 鈴木伸宏、伊藤翔磨、永井カイル 受賞
優秀録音賞 古茂田耕吉 受賞
さらに日本だけでなく、世界中で数々の賞を受賞しているモンスター作品なのです。ちなみに海外のタイトルはONE CUT OF THE DEAD。
今や、上田監督は、飛ぶ鳥を落とすどころか、地面にめり込ませる勢いの方です!!
ほんとに今回、この方にお願いしてよかったのだろうか・・と、僕は小動物のように震えてます・・・
せっかくならと、ほぼダメ元でメールを送ったら、めちゃくちゃ多忙にも関わらず、「OK」とのことで、取材を受けてくださいました。
取材OKもらった時は、正直な話、「これは夢かな?」と。
というわけで、今回は、メンターの清家さんと一緒に上田監督に会って、いろいろなことを聞きました・・!
上田監督と、マネージャーの鈴木さんです。
今回の目次です!!
<目次>
1.上田監督の絵コンテ
2.上田監督はいくつから撮り始めたのか、「カメ止め」の編集時間やソフトについて
3.舞台と映画はどのように違うのか
4.映画を撮るとき、上田監督なりの工夫
5.動画の構図や、スタッフとの関係について
6.脚本のストックとフレームワーク
7.好きな監督や作品、ジャンルについて
8.映画作っていて楽しい瞬間について
9.上田監督に動画のアドバイスをいただく
10.まとめ
1.上田監督の絵コンテ
今日は取材を受けていただき、本当にありがとうございます・・!!
早速一つ目の質問なんですが、動画作るとき、僕も素人の見様見真似で絵コンテ書くんですが、絵コンテ通りに撮れなかったり、撮影しても「こんな風じゃないな」ってなったり、イメージが全然違う感じになります。
そういうときって、監督はどうされるんですか?
僕は絵コンテ描いてないですね。
えっ!?
僕は、中学校の頃から、ハンディカムで自主映画を撮り始めていて、友達と他愛のないものを毎日撮ってたんですよ。
それは思い付きで撮っているから、絵コンテなんか、なくて。
そんで、20歳から25歳くらいまで映画を撮ってない時期があって、25歳から映画製作団体「PANPOKOPINA」を立ち上げて、本格的に自主映画を撮り始めた最初の時に、絵コンテを描いてました。
しばらく描いてた時期があったし、作品によって、描いているものもありました。そして今は、描いてないです。
脚本を書いて、撮る前に絵コンテを書くと「こういうアイデアがあるな、こういう立ち位置があるな、これだったらこんな展開もありだな」っていう風にアイデアが出てくるんです。それでシナリオそのものが変わってくるときもあるんですよ。
なので撮る前は、絵コンテは有効なんですが、撮ってるときは、逆に絵コンテにしばられて、現場で生まれてきた新しいアイデアなどが、生かしづらくなるのかなと。
今は、脚本を書くときに、ト書きを「絵コンテに近い形」で書いているんですよ。僕は、脚本も自分で書いているので。
つまり、例を挙げると、台本のト書きに、
一行目「女性の泣き顔」
って書いて、
二行目「泣いている女性が踏切の前に立っている」
と書くと、「女性の泣き顔をアップで撮って、そのあと、踏切の場面を撮る」というイメージが湧くじゃないですか、そんな風に脚本を書いているんですよ。
これが普通の書き方だったら、
「泣いている女性が、踏切の前に立っている」
と書けばいいんですが、僕は「女性の顔の寄りのワンカットがほしいな」と思っているので、ト書きに落とし込んでいることが多いですね。
なるほど・・・・
編集を自分でやっているっていうのも大きいかもしれないです。
どういうカットがあれば成立するのかもイメージできるんで。
「この段取りをやって、引きを撮って、寄りをとって、これを2~3回撮って、大体4カットか」ってな感じで。
また「カメラを止めるな!」でも組んでいるカメラマンの曽根さんが、ずっと一緒にやっているんです。なので今は現場で段取りをやってもらって、その場で決まってます。「こっちを撮って、こんな感じでやって」的な感じで。
なるほど・・・勉強になります・・・。
真剣に語ってくれる上田監督。
2.上田監督はいくつから撮り始めたのか、「カメ止め」の編集時間やソフトについて
もしかしたら、いろんなところで聞かれてるかもなのですが、「カメラを止めるな!」の編集時間、撮った素材の量、使った編集ソフト、動画をいくつから撮り始めたか、などを伺ってもよいですか?
「カメラを止めるな!」の編集は、ほとんどの作業を自宅の古いマックだけでやっているので、具体的に何時間使ったとかいうのはわからないですね・・・。7月1日にクランクアップして、関係者試写会が10月15日だったので、3か月間、仕事をしながら、空いているときに編集していたかな。
使っているソフトはFinal Cut Pro7ですね。
今はAdobe premiereを使っている人が多いかな。
そうなんですね・・・!
僕は、After Effectが好きで、グルグル回転させたり、バシューンと光らせたり、ついついやっちゃいます。
最初の覚えたときは、僕もそういうエフェクト使ったりしましたけどね(笑)
結局シンプルになりますよ。カットの積み重ねで生み出したいなってなります。
(僕、無駄にバンバン使ってるな・・・)
それから、「カメラを止めるな!」で撮影した量ですが、撮影日数が8日間で、2/3が廃墟ですね。作中では、夜のシーンがほとんどなくて、朝の6時から夕方の18時までしか撮れなかったので、多少はカットした部分はありますが、そこまで量は多く撮ってないと思います。
かなりたくさんのカットを撮って、1時間半の枠におさめるものだと思ってました・・・。
ちなみに、いくつの時から撮り始めているんですか?
中学校、高校の時、放課後に集まって「今日何撮る?」「この前映画で見たこんなん撮ろうぜ!」って言いながら、日が沈むまで撮ってましたね。
で、途中で終わって、次の日「何撮る?」って始まって。みたいな感じ。
そういう映画というより、映画のような、映画を目指したようなものからコントまで、ちっちゃいの合わせると100本くらいは撮ったかなぁ
中学や高校で100本・・・・すごい・・・
ちゃんとした作品という形で取り組んだのは、高校の時。文化祭で、お化け屋敷とかクラスでやるじゃないですか。僕らのクラスは毎年映画を作るんですね。
高校一年の時に30分くらいの短編映画を撮って、高2の時に60分くらいの映画を撮って、高3の時に120分の戦争映画を撮って、そのへんが初めてつくった作品かな。
高校時代で、長編映画・・・・
20歳から25歳までは、映画からちょっと離れてる時期があって、25歳の時に映画製作団体を立ち上げて、それが2010年かな。
そこから2017年まで、自分で作品を撮ったり。妻が、映画監督やアニメーターをしているので、その編集やプロデューサーをやったり。自分の団体で、他のスタッフが監督している物の、脚本やプロデューサーで入ったりとかしてます。
なるほど・・・
3.舞台と映画はどのように違うのか
ちなみに監督は、映画以外に舞台の演出などもされたことありますか?
舞台は30分くらいの短編を1回と、1時間半くらいの長編を1回だけしたことがあります。
高校の時に文化祭で映画作っていたら、高2の終わりくらいに演劇部の先生に、「脚本、演出をしてほしい」ってスカウトされたんですよ。
それまでうちの演劇部は、いつも地区予選落ちだったんですが、僕が脚本、演出をやってたら、近畿2位までいきました。
実は、僕は舞台のことをあんまり知らなかったんで、場面転換しまくる感じの映画的な演出でやったんですけど、それが当時の高校演劇で珍しかったせいか好評でした。でも、演出としてみると、舞台と映画は違うとおもいます。
演技そのものも、舞台と映像は違いますよね。
映像だと目の演技が重要だったりしますが、舞台だと、劇場の大きさに左右される部分もあります。
ただ小さな劇場だと、目の動きだけでも演技として成り立ちます。
違うものといえば、舞台のセリフによるかもしれませんが、リアリティのラインが違うと思います。
舞台は、目の前の役者が演じている「嘘」という前提がありますので、リアリティのラインが映画より低いんです。
例えば、舞台上で「目の前に宇宙がある」といったら、観客は「目の前に宇宙がある」こと受け入れているじゃないですか。でも映画ではそれはできないんです。
あとは切り取れる箇所が違うかな。映画の場合は、見るところが絞れるんですけど、舞台では、役者の言葉や動線だったりで、お客さんの視線を誘導していかないといけないので、その辺りが違いますね。
また一概には言えない部分があるんですけど、舞台の場合は、どっちかというと客席側に向けて発信しているものが多いかなと。でも映画の場合は、カメラやスクリーンの向こうのお客さんに芝居を始めた瞬間に、うそっぽくなるんです。
コメディなんか特にそうなんですけど、目の前の人と真剣に芝居をしているのを俯瞰してみたら「滑稽で面白い」ってなるんですけど、カメラの先にいる観客を笑わせようとした瞬間に滑るっていうのがあります。
知らなかった・・・・。
4.映画を撮るとき、上田監督なりの工夫
「カメラを止めるな!」の第三幕は、舞台の演劇の裏側に近いなぁと思って見てました!!
舞台って止められないので、ドタバタがそれと似てて、面白いなぁって。
これも劇団によると思うんですけど、舞台の場合って、できる限り、毎回同じクオリティを届けようっていうのがあると思うんです。もちろん、回によって熱量が変わってくるとかあると思うんですけど。
映画の場合、できるだけ脚本を練りこんで、リハーサルを何回も重ねて、固めたうえで、現場では、壊そうと思って撮っているんです。
フィクションを撮っているんですけど、役者がかんじゃったり、転んじゃったり。役者に負荷をかけて、二度と取れないドキュメントを混ぜたいと思っているんですね。そういうことって、舞台では成立しづらいのかなって思います。
稽古で、「それ、面白いから使おう!」ってなっちゃっても、ずっとやっていくと、作られた演技になっちゃうんですよね。そういう意味で映像はうらやましいですね。一発目で出たものをそのまま使えるので。
そうですね、だから、1テイク目でOKでないと苦しくなるんです。
2テイク目は、「なぞる芝居」になるんで、2テイク目は何か言葉をかけるようにしています。新しい要素をいれるように。
面白かったトラブルも、テイクを重ねていくと、だんだんと段取りになってしまうんですね・・・。
ご存知の通り、「カメラを止めるな!」のワンカットは6テイクを撮って、6テイク目を使っているんです。
レンズに血がかかったりしたのは、ガチのトラブルだし、他にも、ゾンビメイクが遅れて出てくるのが遅くなっちゃって、アドリブでつないでるところがあるんですが。そういったトラブルがあるから、役者たちの本当のドキュメントが入っているんです。逆に、5テイク目は全く問題なく、そつなく、完璧に終わったんですよ。それが、いまいちだったので、もう一回やらしてくれってやったんです。
できるだけ、固めて、固めて、壊すようにしてます。
固める過程でしっかりとレールがあれば、ちょっと脱線してもしっかり戻ってくるんですよ。レールがないとダメですが(笑)
レールを作ったうえで、脱線して、はみ出たとき、二度と撮れない面白いものが出てくる。でもレールがあるからちゃんと戻ってこれる。
そういうのはキャスティング段階で考えてます。舞台経験やキャリアがあって安定している人を「カメラを止めるな!」のワンカットに多く入れてますからね。その中に、芝居が安定しない人をいれることで、他の人にとってのドキュメントのような形になるんです。そうやって、芝居があんまり固まらないようにしてます。
そういう意味では、最初に話した絵コンテも、描いて、でも現場では見ないってのがベストかもしれません。
今は、カメラマンの曽根さんとも長いし、インディーズでずっとやってきたので、絵コンテを書いてる時間が取れないことが多かったんです。
でも、脚本書いている時点で大まかに映像が頭にあるんで、それをカメラマンに要所要所で伝えるんですよ。
5.動画の構図や、スタッフとの関係について。
動画を作っているときに、構図をどうすればいいのか、わからなくなっちゃいます・・・。
脚本の要所要所に、「ここはこう撮ったほうがいいかな」「ここは360度カメラを回してみよう」ってイメージをもって書いてるときはありますけど、現場で芝居を見てみないとわからないので、そんなに決め込んでないです。
役者がどう動くかって、想定しきれないですからね。
前は脚本に「かっこ書き」をいっぱい書いてたんです。(笑う)とか(立ち上がる)とか。
今は、自分の流れを把握して、整理するために初稿は書きますけど、渡す前に消すことが多いです。
「かっこ書き」を書くことで可能性をつぶしちゃうかなと。
自分のイメージみたいなものはあるんですけど、もしかしたら(笑う)場面で笑わないほうが、良いものが撮れることがあるかもしれませんし、柔軟にやろうとはおもってます。
自分が持っているイメージを、役者が演じて上回ったりすることや、そういう時に、「この役者の持っているイメージ、僕を上回ったなぁ、くやしいなぁ」とか思うことってあります?
自分のイメージを上回ることはいっぱいありますね。
そういうときって、僕はうれしいです。(笑)
僕の現場って、カメラマンさんも録音さんも、何回もやっている人が多いので、録音さんが「ここの役者の芝居はこうじゃないか」って言ってくれたり。
それでいいと思ったら「そうですね!」っていってそうします。
作品が面白くなることが一番で、この録音マンやカメラマン、役者でいこうと決めたのは僕なので、みんながイメージを上回ってくれると「僕の手柄やろ!」って思います。(笑)
自分より優秀な人をいっぱい集めるという気持ちでやってますね。
6.脚本のストックとフレームワーク
脚本を書かれるということなのですが、他の人の脚本を撮ることってありますか?
ほとんどないんですけど、「漫画作品を10分間のVR作品として撮る」というのをやったことはありましたね。
演出やって本を書くことができるって、すごい才能だなって思うんですが、本を書くときって、絞り出す感じです?それともストックがいっぱいあるんですか?
忙しくなる前は企画をいっぱいストックしてました。今はありがたいことに、いろいろなオファーをいただいてます。でも、やりたいことをそんなにすぐには思いつかないので、お題と〆切を言われて動き出す感じですね。(笑)
〆切を言われちゃうと、もう追い詰められますよね。スケジュールが決まってるわけだし。
やりたいことはストックがあるんですけど、ストックが切れたときは、お題と〆切を与えられて書きますね。(笑)
実は一番大変なのが、「上田君の好きなものをなんでも作っていいよ。どれだけ時間かかってもいいから」と言われることですね。
皆さんそうおっしゃられますよね。時間などで追い詰められないと、何やってもいいよって言われちゃうと、何も出なくなっちゃう。
そうなんですよね。「これがやりたい」って始まる企画もありますけど、大体がお題と〆切を与えられて、書き始めて、書いているうちに「この作品でやりたい」ってことが出てくる感じですね。
〆切の話で盛り上がるお二人。
でもね、脚本は「引き出し」なんだろうなって思います。
物語は、いかようにも描けるじゃないですか。無数の方向性に勧めるから。
僕は、ちっちゃいころから映画を見てて、思春期の時は、ハリウッド映画を浴びるようにみていたんです。エンターテイメントには、ある程度の型があるんですよ。三幕構成とか。
最初に主人公の日常が描かれて、25分くらいのポイントで、一つ目のターニングポイントが来て、非日常に突入して、75分くらいのところでクライマックスを迎えて、というこう三幕構成という大きなフレームがあるんですね。ハリウッドなんかは、それに従っているものが多いんです。例えば、ロッキーみたいなスポーツものだと、60分くらいでトレーニングをするんですよ。
そしてタイムコード見ていると、25分から35分くらいのとこで、絶対何か起こらないと、エンターテイメントとして、見てて辛くなってくるんですね。
そんなフレームがあったんですね・・・・
あとは、例えば「外的ゴール」と「内的ゴール」みたいなのがあって、
外的ゴール=「テロリストを倒す」「サメを倒す」
みたいな、話の骨格にあたる大筋と、
内的ゴール=「その物語を通じて主人公がどう成長するか」
というサブプロット的なものなんですけど、外的ゴール、内的ゴールが、同時にゴールテープを切ると美しいんです。
例えば、主人公がトラウマで銃を撃てない設定があったとして、「トラウマを乗り越えてテロリストを倒す」というのが外的ゴール、内的ゴールの同時達成なんです。それがハリウッド映画の基本スタイルなんです。
映画「ジョーズ」とかも、所長が海が苦手なんですけど、サメを倒すときに海にとび込むんです。つまり自分のトラウマを乗り越えるのとサメを倒すという同時にゴールテープを切るんですよ。
ハリウッド映画では、そういうお約束みたいなフォーマットに習ってやっていることが多いんです。
僕はそれを浴びるように見てきたので、体に染みついていて、理屈を本で読む前に、作品をそう描くようになってたんです。自然に3幕構成で、内的ゴール、外的ゴールを作ってました。
7.好きな監督や作品、ジャンルについて
お好きな監督とかっています?
いっぱいいますね。
クエンティン・タランティーノ監督、マシュー・ヴォーン監督、ジェームズ・ガン監督、ポール・トーマス・アンダーソン監督、クリント・イーストウッド監督、スティーヴン・スピルバーグ監督、ウディ・アレン監督、スタンリー・キューブリック監督。
僕、昔のアメリカの50年代くらいのロマンティックコメディやスクリューボールコメディが好きなんです。ビリー・ワイルダー監督とか、ハワード・ホークス監督とか。
典型的なストーリーは、「男と女が出会うが、初対面での印象が悪くお互いに好意を持てず、その後も会うたびに口喧嘩になる。ところが、行動を共にし協力し合わなければならない事態に遭遇し、お互いのことをよく知るようになり惹かれ合っていく。そして、お互いの気持ちをなかなか伝えられずにいるが、最後には結ばれてハッピーエンド」というものである。
スクリューボール・コメディ(Screwball comedy)は1930年代初頭から1940年代にかけてハリウッドでさかんに作られたコメディ映画。住む世界が異なる男女のラブ・ロマンス、常識にとらわれない登場人物、テンポのよい洒落た会話、つぎつぎに事件が起きる波乱にとんだ物語などを主な特徴とする
ベタですけど映画では、「アパートの鍵貸します」とか「生きるべきか死ぬべきか」とか。
日本って、そういうドタバタのスクリューボール的な、乾いたコメディってあんまりないんですよ。
どっちかというと、しっとりさせちゃうんです。日本は映画で「泣き」のほうが強いです。
邦画の好きな監督は、いっぱいいます。時代にもよるんですけど、岩井俊二監督、黒沢清監督、北野武監督は大好きですね。
20代の前半のころは三谷幸喜さんが一番好きで、映画は「ラジオの時間」がすごく好きでした。そして舞台はもっと好きですね。
「ラジオの時間」と「カメラを止めるな!」は共通点ありますね。
有難いことに、「ラジオの時間」は時々、引き合いに出していただきますね。
「カメラを止めるな!」の場合、僕のやりたいことを、いっぱい詰め込んだんです。
バックステージ物は「ラジオの時間」だったり、「アメリカの夜」だったり、「蒲田行進曲」だったり、物語のバックステージを書いたものをやりたいっていうのと、ホラーやゾンビ映画も好きだったので、「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」や、「死霊のはらわた」とか。
大好きなホラー映画3本が、「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」「死霊のはらわた」「悪魔のいけにえ」なんですけど、全部クラシックで、3本ともデビュー作で、低予算で、無名の俳優たちなんですよ。
そこに発生する「二度と取れないエネルギーや衝動」みたいなものがこもってるし、お金がないからこそ、手作り感がすごいあるんです。それがすごい好きで、その「A級ではないホラーゾンビ要素」をやりたかったんです。
また、タランティーノ監督の「パルプフィクション」や「桐島、部活やめるってよ」とか「運命じゃない人」とか、時間軸が行ったり来たりするものが好きで、そういった自分の好きなものを「カメラを止めるな!」に詰め込んでつくってますね。
8.映画作っていて楽しい瞬間について
映画作っているときで、一番楽しい時間を聞いてもよいでしょうか。
いやー、よく聞かれるけど、全部かなぁ。
脚本書いてるときは、脚本書いている楽しさがあるし、現場は現場の楽しさがあるし、編集は編集の楽しさがあるんですよ。
でも、もし一つだけ選べばと言われたら、現場かなぁ。
脚本と編集って、インディーズでやっていたので、一人で作業にあたる時間が多いじゃないですか。「何時までに終わらせなきゃいけない」とか、そんなに負荷が厳しくないじゃないですか。
でも現場だと、「日が暮れるまで」とか、「何時までに終わらせなきゃいけない」とか、「雨が降ってきたけど今日中にこの場を取らなきゃいけない」とかいろんな負荷がかかるじゃないですか。「じゃあどうする?じゃあどうする!?」って考えながら、そういう負荷の中でモノづくりするのが好きなんですよね。
トラブルが来たほうが「よっしゃ!」って思うときはあります(笑)
結果的にトラブルがあってよかったなってのはありますか?
「カメラを止めるな!」で血がかかったのもそうです。
他の例だと、撮影中に凍えるくらいめちゃくちゃ寒くて、雪も降ってきちゃって、芝居どころじゃなくなっちゃったんことがあるんですね。
でも、向かい合って会話をするシーンだったんで、リラックスしてやられると、「芝居」をされちゃうなって思ったんですよ。
芝居をする余裕がないくらい寒かったおかげで、すごくリアルになって、しかも雪が降って、絵的にさらによくなりました。
僕は、人間が机の上で考えられることっていうのは、たかが知れてると思っているんですよ。
つまり、人間が考える「知れている要素」に、何かトラブルが入って、なんか化学反応みたいなのがあって、できちゃったもののほうが面白いことは、いっぱいあるので、そういうトラブルや予期せぬことは、ワーッとおもいつつも、「これで面白くなるかな」と思いながらやってます。
9.上田監督に動画のアドバイスをいただく
実は、僕が作った動画があるので、ちょっとだけでもよいので、見ていただいてもいいでしょうか。
僕の作った動画を何度も何度も見直す上田監督。めちゃくちゃドキドキします・・・。
これ作ったんですか?
ふむ、なるほど・・・。
どうでしょうか・・・・!
これはもうちょっと、シンプルにしたほうがいいんでしょうね。
はじめたてのころって、欲張っちゃうんですよ。「このカットもいれたい、このカットもいれたい」って。それで「ここ白黒にしよ」って。
この動画、白黒だったり、カラーだったりするじゃないですか。これも、うまいことメリハリをつけれればいいんですけど、その狙いとかというのは、なんですか?
この白黒とカラーは、「舞台に立つ」と「日常」の対比のつもりです・・・。
それが、ぱっと見で伝わらなかったのかな、と。
シームレスにつないで、どこかで舞台の引きを見せたら、「これは舞台の引きだったんだ」ってわかるものでもいいかもしれませんね。
言われたことをとにかくメモる!!
ポイントを具体的に言うと、この動画だと、字幕を出すタイミングと、人がアクション出すタイミングがぶつかっていると、どっちをみていいかわからなくなる。字を見るって、負荷がかかるじゃないですか。見てる人が、絵を見なくてもいい時間に字を出さないと。
また、感情的なことでいうと、「もっとうまくなりたい」って字幕の部分で、笑顔よりも頭抱えているほうが、感情移入しやすいんですよ。
基本的に物語って、主人公が壁にぶつかったり、葛藤したり、悩んでたりする時に感情移入するので、笑顔じゃないほうがいいんですよ。
あと、この撮影、部屋で段取りでやっているってのがわかっちゃうんですよ。だから、舞台の裏で頭抱えているほうがいいと思うんです。
難しいかもしれませんが、これは、全体をドキュメント形式で構成したほうがいいんじゃないかなと思います。
特に白黒の部分は、相当うまく構成しないと。安っぽくみえてしまうしね。
あと、音楽のあてどころも重要です。
何度も見て、アドバイスをくれる上田監督・・・!
めちゃくちゃ勉強になりました・・・!!
ちなみに撮影するときって、最初のころは、こういうハンディカムだったんですか?
基本、今も映画は一台で撮ってます。
映画の現場は、一台のところが多いとおもいますよ。テレビドラマなんかはマルチカメラが多いと思いますが。
芝居は何度も繰り返します。同じ芝居をもう一度、別アングルでって感じで。
ただまあ、それも、なんていうんですかね。
例えば、感情的なやり取りを撮りたい時、最初に引きで撮ると一回目で感情のやり取りを出し切っちゃって、二回目、三回目は落ちちゃう、みたいな時があるので、最初は寄りでとらないと、、みたいな、撮る順番がありますね。
動画をうまくなるコツって、最後は作って、作って、作りまくるしか、ないんでしょうか・・。
そうだと思いますよ。とにかく、映画とかなんでも映像を浴びるように見て、見てきたものが、幾千にも蓄積して、無意識が強化されて、言語化できないけど感覚で分かる状態になるので。いっぱい見て、いっぱいやって、トライ&エラーをいっぱいやって、自分だけの100点を早く見つけるのが一番かな。
僕は圧倒的なトライ&エラー不足ですね・・・
10.まとめ
というわけで、上田監督に貴重なお時間をいただいて、本当に貴重な話をたくさん聞けました!!
上田監督に実際に会ってインタビューをすると、色々なエピソードを、めちゃくちゃ楽しそうに語ってくれました。
上田監督って「少年のような純粋さ」と「人を引き付ける魅力、人間力」のある方で、きっと撮影現場でも、楽しみながら、作品を撮ってるんだろうなと。
そして映画が大好きで、ハリウッドのメソッドが無意識に染みつくほど浴びるように見続けて、圧倒的な数のトライ&エラーによって、出来上がったのがメガヒット作品「カメラを止めるな!」だったんだなと痛感。
決して、偶然や幸運などではなく、映画を本当に好きで好きでたまらない、少年の心を持った上田監督が、たくさんのトライ&エラーを経験し、心の底から楽しみながら撮ったからこそ、掴むことができた栄光だったんだなと思いました。
そして「カメラを止めるな!」金曜ロードショー!!なんと視聴率は今年最高!!
『カメラを止めるな!』の視聴率は11.9%、『ズートピア』の10.3%、『メアリと魔女の花』の10.3%、『DESTINY 鎌倉ものがたり』の11.4%などの初放送時の数字も超えてる!これは快挙と言っていいのでは? https://t.co/2eT8CCbbuQ
— ヒナタカ(映画ライター) (@HinatakaJeF) 2019年3月11日
また「カメラを止めるな!」ですが、現在「あつぎのえいがかん」でも公開中!!
そしてショーンオブザデッドとまさかのコラボ!!
劇場に「カメラを止めるな!」が帰ってきます!!
\速報/
『ショーン・オブ・ザ・デッド』『カメラを止めるな!』日米ゾンビ2本立て特別上映が!?各日程50枚以上席が売れたら決定みたい!4/2(火)TOHOシネマズ日比谷https://t.co/ruOTzPsfnv
4/5(金)TOHOシネマズ梅田https://t.co/Cm2Hi3q9Rd#ショーン・オブ・ザ・デッド #カメラを止めるな pic.twitter.com/jgxHnBrhbt
— 上田慎一郎 (@shin0407) 2019年3月4日
またスピンオフ作品「カメラを止めるな!スピンオフ ハリウッド大作戦!」
現在、ネスレシアターに登録(無料)すれば、4月30日まで視聴できます!!
また、AbemaTVでも見逃し視聴で3月20日まで「ハリウッド大作戦」が視聴できます!!
カメラを止めるな!スピンオフ「ハリウッド大作戦」AbeamTV
さらに、「カメラを止めるな!」の聖地とも呼ばれる、「池袋シネマ・ロサ」さんでスピンオフの特別上映が決定しました!!
\\!!BIG NEWS!!//
🎥#カメ止めスピンオフ🎬
🇺🇸#ハリウッド大作戦!🇺🇸劇場公開、決定🎉✨✨#カメ止め の聖地 池袋シネマ・ロサで
15日間限定での期間限定上映!!
大迫力でお楽しみください〜!!▼上映時間に関する情報は下記にて更新予定https://t.co/gaD3yhQ0LV pic.twitter.com/IOQHeIKmkb
— カメラを止めるな!スピンオフ 『ハリウッド大作戦!』公式 (@kametomespinoff) 2019年3月12日
まだまだ終わらない「カメラを止めるな!」旋風!!
3月21日は、池袋シネマ・ロサさんへ集合だ!!