真っ赤なUFO

太田善也
演出
演出    黒岩亮
美術    柴田秀子
照明    中川隆一
音響    城戸智行
衣裳    竹原典子
舞台監督  野口毅
製作    小笠原杏緒
キャスト
斉藤清(父)          山﨑秀樹
斉藤康子(母)         小林さやか
斉藤久美子(長女)       當銀祥恵
斉藤誠(長男)         松田周
斉藤ハル(祖母 清の母)    山本与志恵
柴龍之介(久美子の恋人)    高松潤
小早川ちとせ(近所の主婦)   井上夏葉
野呂邦夫(TVのディレクター) 矢崎文也
遠山水心(小説家)       平尾仁
立木雅彦(数学者)       山賀教弘
戌井健(野呂の部下)      伊東潤
日程
2017年9月29日(金)~10月8日(日)
劇場
青年座劇場
1978年(昭和53年)ピンク・レディー「UFO]や映画「スター・ウォーズ」「未知との遭遇」が大ヒット
全国各地でUFOの目撃情報が相次いで報告され、空前のUFOブームが起きていた。

東京の郊外にある一軒家。印刷業を営む斉藤清は、優しい妻、市役所に勤める娘、大学生の息子、そして年老いた母と、一家五人、慎ましく暮らしていた。
ところが、清が45歳の誕生日を迎えたその夜、とんでもない事が起きる。
この演劇を見た人
竹森裕哉さん

おすすめ度
脚本のストーリー性 5
役者の表現力 5
演出の巧さ 5
演出の奇抜さ 3
舞台装置の芸術性 5
客席と舞台の一体感 5
劇場設備の充実度 4
敷居の高さ 5
見た人の感想

とにかく笑いたいなら見よう!!

タイトルからして、SFものかなと思いきや、ジャンルはコメディ。昭和の家族愛とUFOという、一見何の関係もなさそうな二つをうまく融合させた作品です。
UFOだからといって、映画「宇宙戦争」みたいな壮大な展開があるわけではありません
お父さんと家族の絆にスポットをあてた人情派です。
家族を題材にした身近なストーリーに役者さんの高い表現力が加わり、昭和の家屋の狭さを小劇場の客席と舞台の近さを生かして表現するという、全体の完成度がとても高かったです。なんか面白いのみたいな~って言われた時にお勧めできる、演劇初心者にも安心の作品です!

舞台はUFOブーム真っただ中の昭和。水曜スペシャルや矢追純一が全盛期だったころです。
主人公は山﨑秀樹さん演じる斉藤家のお父さん。
寡黙で頑固な職人気質だけど、どこか抜けているキャラで、そのお父さんが45歳の誕生日を迎えるところから物語がスタートします。

お父さんがせっかくの誕生日なのに色々な人に振り回されていきます。
近所のおばさんに「奥さん、浮気してるかもよ」って吹き込まれたり、
娘にいきなり「結婚相手ができた」と言われたり、紹介された娘の恋人がとんでもない変人だったりして、観ながら内心「おいおい、この家族大丈夫か?」と心配になってきます。

見どころは、娘の恋人役の高松潤さんの、独特なキャラクターです。
見た目はキリっと凛々しく、堅物なキャラかなーと思ったら、突然発声練習を始めたりする変人っぷり。
でも娘の久美子の尻に敷かれて全力の土下座をしたり、祖母のハルをおんぶしてルンルン登場したり、フタを開けたら何をしでかすのか全く読めないコミカルで表情豊かなキャラでした。
深刻な話をしてるのに、出てくるたびに笑ってしまうし、目が離せませんでした!

後半の話はUFO絡みで、キャラクターが一気に増え、TV局、数学者、UFO研究家など、どんどん出てきます。
特に学者役の山賀教弘さんが潔癖症でインテリで、もう驚くほど嫌味ったらしくて、見れば見るほど憎らしい気分になってきます!

後半は「UFOは本当に存在するのか」がメインの話となるので、色々な人の思惑が飛び交う内容になっていきます。
斉藤家の影がちょっと薄くなるのが残念。

でも終盤にかけて、お父さんと家族の絆をどう修復していくのか、斉藤家の問題はどう解決していくのか、UFOは本当にいるのか、といった伏線をきっちりと拾っていきます。。
「ご想像にお任せ」となるかなと思っていたので、ここはうれしいところ。
ラストを見たとき、「え、アレが伏線だった!?」ってところは驚きました!
ラストはお楽しみに!!

全体を通して、テンポよく進むので、あんまりダレてしまうことがなく、シンプルなストーリーなので置いてきぼりにされない!
とてもバランスが取れて、もう一度見に行きたい!
そう思える完成度の高い素晴らしい作品でした。

残念な点とすれば、この作品は小劇場でしかできないことかもしれません。
これが大劇場で大規模なセットを作ったとして、世界観を表現しきれるかどうか。
ぜひとも小劇場で再演があったら見に行ってほしい作品です!

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