ストーリー
首相答弁を控えたある日のこと、記者会館の共有コピー機から重大な書類が見つかる。
それは、「首相に書面通りの質問するので、書面通りに答えてください。」という、メディアと政権の忖度の証拠とも重要な書類だった!
これが公になれば、メディアと政権の癒着の証拠となり、報道の信用性が失墜、そして政権への大ダメージになってしまう!
幸いにも、存在を知るものは数人。書類をめぐって国会記者会館の屋上で秘密の話し合いが行われる。
発見した者。穏便に済ませたい者。スクープにすべきか考える者。政権を考える者。真実として公表すべきとする者。
その選択は正しいのか?正義なのか?抜き差しならぬ状況に追い込まれる5名。
彼らは「空気」を読むことができるのだろうか。
みどころ
脚本、ストーリー、俳優陣の演技レベル、どれをとっても抜群に面白い!
「政治と報道の癒着」という重いテーマにも関わらず、コメディとシリアスが絶妙なバランスで展開されています!
報道の危機というほどの重大な事態にも関わらず、みんなの行動がどれもコメディのような掛け合いばかり。特に、「えーそんなこと言ったっけ?」「え?そんな声だった?」みたいな笑えるような掛け合いは必見です!
でもよくよく考えてみると、実際の世界でも同じようなことが行われてたりするわけです。表向きはコメディな笑いなのに、じっくり考えると、裏側で痛烈な皮肉の利いた表現であり、「よく考えられてあるなぁ」とびっくりしました。
また、俳優陣が実力派ばかりなので、演劇のレベルが素晴らしく高い!
俳優陣一人一人がセリフが無いところでも、しっかりと存在感を発揮!!それでいて、他の俳優掛け合いを邪魔しない、絶妙な存在感を出せるのは驚きです!
演出面でも、時々垣間見える日常の世界、報道の人でもそこには家族があって日常がある。その日常があるからこそ、苦悩してしまう。演技力に裏付けされた人間臭いリアリティさが存分に感じられます。
個人的感想
すごくオススメできる作品で、演劇初心者でもとても楽しめると思います。
私は前作の「THE空気」を見ていないのですが、第25回読売演劇大賞にて最優秀演出賞(永井愛)優秀作品賞(二兎社)優秀女優賞(若村麻由美)と、とても評価が高かったそうです。
実はこの題材、2000年に実際にあった出来事がモデルとのこと。
「本当にありそうな気がする」記者同士のやりとりや、担当している政治家が出世すると、記者が育てたと言わんばかりの記者と政治家の奇妙な関係が描かれます。
また、この舞台で初めて知ったのですが、記者クラブって日本独特の制度なんですね!
記者クラブがあることで、独占的な情報提供を得ることができるし、首相や大臣の会見も記者クラブを通して行われる。
その中には、このシステムで、果たして公正な報道ができるのかという痛烈な皮肉が作品に込められています。
思いっきり笑いながらも、最後はうーんと考えさせられる。色々な方に幅広くお勧めできる必見の作品です!