残り火

作 瀬戸山美咲
演出
演出 黒岩亮
美術 柴田秀子
照明 中川隆一
音響 城戸智行
衣裳 竹原典子
舞台監督 尾花真
製作 森正敏 川上英四郎
宣伝美術 村松丈彦
キャスト
藤田健太郎=山本龍二
藤田明子=松熊つる松
藤田一俊=須田祐介
藤田菜奈=市橋恵
沢渡伸二=平尾仁
廣木夏江=麻生侑里
沢渡大樹=逢笠恵祐
滝本学=山野史人
早瀬真由=安藤瞳
日程
2018年11月22日(木)~12月2日(日)
劇場
ザ・スズナリ
急成長中の居酒屋チェーンを経営する藤田健太郎は、今から12年前、
高速道路で煽り運転の末に交通事故を起こし、
当時8歳だった少女沢渡美希を死なせてしまった。
その後、健太郎が服役中の7年間は、
古くからの友人である滝本学の援助により、家族はなんとか生きてきた。
出所した健太郎は居酒屋をオープンさせ、妻、弁護士の長男、ハワイ留学を計画中の長女と
豊かな生活を送るようになった。

しかし、ある男が健太郎の目の前に現われたことにより、状況は一変する。

「交通事故」の加害者と被害者。
戻らない命と生きていく人々。
ふたつの家族を通して、罪と罰、そして生きることの本質を描き出す。
この演劇を見た人
みなちゃん

おすすめ度
脚本のストーリー性 5
役者の表現力 5
演出の巧さ 4
演出の奇抜さ 2
舞台装置の芸術性 3
客席と舞台の一体感 4
劇場設備の充実度 3
敷居の高さ 4
見た人の感想

今だから、心が動かされる作品でした。

1時間40分と短い作品の中に起承転結が上手に作りこまれていて、心動かされる作品でした。

12年前に、煽り運転の末に前方に回り込み車を停車させ、後ろから来たトラックと衝突し車に乗っていた8歳の女の子が亡くなってしまうという痛ましい事故。
ニュースでも度々問題になっている、煽り運転の被害者の遺族と加害者とその家族のお話です。

それぞれの立場を自分に置き換えてみることが出来ました。

最初はごく自然な家族の日常を見ているようでしたが、事態は段々と12年前起きた交通事故が姿を現して、加害者と被害者の状況が一変するのを目で見て感じ取れました。

一場は加害者の藤田の家から始まるのですが、息子は弁護士、娘はもうすぐハワイ留学。経営している居酒屋は、間もなく2号店を出店する予定で、友人の滝本の援助もあって、一見幸せそうに見える加害者家族。

その一方で、被害者家族は事件を機に妻と離婚、借金を抱え、経営する喫茶店をもうすぐ閉じる予定だったりで、加害者側とは対照的でした。

被害者がなんでこんなに苦労しなければならないんだ、、という納得ができない気持ちでしたが、
話は徐々に加害者側の家族の苦労や、冷え切った家族関係が見えてきたり、友人に支配をされていたり、少しずつ加害者家族が置かれている状況が見えてきて、こちら側の気持ちも動かされました。

一方で、平尾さん演じる被害者の父親に涙、涙でした。
決して加害者を責めず、ひた向きに生きていこうとする姿は素敵でした。

この物語の一番印象に残った役は、加害者側の友人の滝本学。
最初は、加害者を援助している近所のおじさんかと思っていたら、加害者家族を支えているようで所有している特殊な人物。この物語が、ただの被害者と加害者だけのお話ではない大事なキーパーソンとして、深く印象に残りました。

加害者側、被害者側それぞれの立場で見せてくれたこの作品は、ニュースで見る事件の裏側を見せてくれているようで、決して傍観視してはいけない作品だと感じました。
この1時間40分という短い時間の中で、それぞれの登場人物の心境が丁寧に変化していく様を見られて、私もいい時間を過ごすことが出来きました。
最後はすすり泣きがあちこちと…
カーテンコールも拍手喝采でした!
私も、暫く余韻に浸って歩きながら、劇中の残像が頭の中でグルグルと浮かんできました。

いつも思うことなのですが、2週間で公演が終わってしまうのがもったいない。
青年座さんの作品にはいつも号泣してしまうことが多いので、次回も楽しみにしてます。

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