TOHOシネマズが値上げで賛否両論!!映画業界って今どんな感じなのか調べてみた!

TOHOシネマズが鑑賞料金を値上げ 一般1900円に

26年ぶりの値上げということで、昨夜、Yahooでもニュースになっていました。

「弊社では、デジタル映写機や自動券売機等の導入による運営の効率化を図るとともに、映画をより多くのお客様にお届けし楽しんでいただくために新規出店や鑑賞環境の改善などに努めて参りました。しかしながら、アルバイト人件費を中心とした運営コストの上昇や各種設備投資への負担増により、企業努力だけではこれらの吸収は極めて困難であると判断し、鑑賞料金を改定させていただきます。今後も更なる企業努力により、お客様にご満足いただけるようサービスの向上に努めて参りますので、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます」

というわけで、改定前と改定後のグラフですが、livedoorニュースのtwitterから。

ほぼ、一律100円の値上げ。

Twitterでは賛否両論です。個人的には、100円なら・・と思ってしまうところでもあるのですが、値上げするくらい大変なのかな。ということでちょっと映画業界をリサーチしてみました。

興行と配給について

今回のチケット代金を考える前に、興行と配給について。

興行=映画館で上映や接客を担当。

配給=映画を買い付けて、映画の宣伝や映画館への配給を行う。

東宝株式会社より

興行収入のうち、大体50~60%が配給会社(これも一例ですが…)、残りが映画館の取り分で、そこから人件費や設備費用を出しているそうです。

なので、チケット代がまるまる収入になるわけではないのです。

東宝の場合、作品によっては、興行と配給の両方をやっています。

「君の名は」「シン・ゴジラ」などがそうですね。

ちなみに2018年の東宝の配給作品はこちら。(太字は東宝制作作品)

『嘘を愛する女』
『祈りの幕が下りる時』
『空海 -KU-KAI- 美しき王妃の謎』
『映画ドラえもん のび太の宝島』
『坂道のアポロン』
『ちはやふる -結び-』
『映画 クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ ~拉麺大乱~』
『名探偵コナン ゼロの執行人』
『いぬやしき』
『となりの怪物くん』
『ラプラスの魔女』
『のみとり侍』
『恋は雨上がりのように』
『OVER DRIVE』
『羊と鋼の森』
『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』
『未来のミライ』
『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』
センセイ君主』
『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄~』
『ちいさな英雄―カニとタマゴと透明人間―』
『検察側の罪人』
『SUNNY 強い気持ち・強い愛』
『累 -かさね-』
『響 -HIBIKI-』
『コーヒーが冷めないうちに』
『散り椿』
『億男』
『スマホを落としただけなのに』
『来る』
『映画 妖怪ウォッチ FOREVER FRIENDS』
『ニセコイ』

上記以外の作品については配給、制作にかかわっていないため、興行収入の40~50%がTOHOシネマズの収入に。

ちなみに「カメラを止めるな!」はアスミックエースさんが配給を行っているので、TOHOシネマズは興行のみ。

・映画業界の現状を調べてみる。

次に映画業界の現状を調べてみました。

一般社団法人日本映画製作者連盟による興行データを見てみると

多少波はあるものの、映画業界全体の興行収入と入場者数は上昇傾向です。

ところが、公開作品一つに対する入場者数を見てみると

やや右肩下がり。

つまり、映画を見に行く人は増えていても、1作品の平均動員数は減少です。

これは、2011年から急激に公開本数の増加があり、その影響が大きい。

いったい2011年に何があったのか? これの答えはシンプルです。この年、映画館での上映形態がほぼ完全に35mmフィルムからDCP、つまりデジタル上映に切り替わったのです。2012年にスクリーン数が少し減っているでしょう? これはデジタル上映のための設備投資ができなかった劇場がやむなく閉館したという理由が大きいのです。東日本大震災を経て建物の耐震基準の見直しが行われた、というもう一つの理由もありますが。

現在映画館には、ハードディスクで映画のデータが送られてきます。35mmフィルムと違ってずいぶんコンパクトになり、当然現像の手間もないので、制作費も、上映媒体の送料なども大きくコストダウンもできたわけです。それが製作本数の増加の一番の理由ですね。コスト面において、映画を作るハードル、映画を配給するハードルが下がったことは、それをやりたいと思う人にとってはチャンスが増えて喜ばしいことでしょう。

公開本数の激増は映画館にとって福音か? デジタル上映の長短を考える

配給側も、撮る側も、デジタル化によるコストダウンの恩恵を受けて、公開本数が激増。そして激増に対しての危惧もあります。

まず、公開本数の増加によって、始まって終わるサイクルが早くなるのも、上映回数が絞られるのも、そのことで映画館の座席稼働率は上がるかも知れませんが、当然お客様にとってはスケジュール的にキツくなってきます。そのため、「まあ映画館で観なくてもいいか率」も併せて上昇する可能性があります。

また、これが一番大きな危惧なのですが、公開本数が激増することで、映画ファンそれぞれが観ている作品が分散されるため、同じ作品について語り合える可能性が低くなります。

とりわけ物語がある娯楽は、他者と共感しあったり、反発しあったりというのを強く要請してくる、と感じます。音楽やアートは、おそらくは概ね言語を介さないために、個人で楽しみ切れる部分が多いと思うのですが、小説、演劇、映画等は、心の内だけでは十分にその楽しみを味わい切れないのではないか、と感じています。

公開本数の激増は映画館にとって福音か? デジタル上映の長短を考える

「映画館でも見なくてもいい」層の増加と、「周りと語れない」は映画にとって結構痛いような気がします。話題を共有する楽しさってあるし、口コミにもなったりしますからね。

・競合と少子化

以前、演劇市場の時でも少し触れたのですが、

シナリオクラブの特徴

2005年から、インターネット回線の向上により、Youtubeなどの動画普及。それに伴い、演劇市場と同じく映画市場も打撃を受けました。そこから持ち直してきたものの、2011年の東日本大震災の影響で、またも打撃を受けます・・・。

その後、公開本数の増加により、興行収入は増加していますが、入場者数は横ばいです。

そして、スマホやTV、インターネットのといったライバルがどんどん出てきます。

昨今において「映画の観覧料が高い」との意見が多々聞かれるのは、絶対額の問題では無く、「映画を映画館で観ることへの個人の価値感」が減少していると考えれば道理は通る。昔は「1800円出しても観る価値はある」と考えていた人が多数派だったが、今は「1800円ほどの価値は無い」との意見が大勢を占めている。

これが単純に映画の質の低下を意味するのか、それとも冒頭で触れたように、それ以外の娯楽(テレビ、ビデオ、インターネット、携帯電話など)の普及で相対的に「映画館で映画を観る」ことへの価値が下げられたのかは、今件の値からのみでは分からない。しかし周囲を見渡す限り、後者の要因がメインであることは間違いない。時代の変化に伴った変革・進化を、映画館も求められているに違いない。

70年近くにわたる映画観覧料推移をグラフ化してみる(最新)

映画には2000円近い金額を出しても惜しくないコンテンツ作りというのが求められているのかなと。

また、映画館の入場者数が横ばいなので、少子高齢化にも影響を受けるのではないかなと。

NTTコムのデータで、どの年代が映画を見ているかですが

NTTコム第7回「映画館での映画鑑賞」に関する調査

やっぱり、若い層の鑑賞率が高い。いきなり入場者数が減少することは無さそうだけど、横ばいを考えると、将来は少子高齢化の影響とともに、入場者数の減少が起きるのかなと。

まとめ

映画業界は、興行収入だけで見ると順風満帆に見えるんですが、調べてみると、作品数の激増や、少子高齢化の波、競合コンテンツなど、いくつか悩みの種がありそう。

入場料を100円値上げしたTOHOシネマズですが、映画業界では最大手です。この動きが映画業界にどう影響を与えるのか。

まあ、僕は値上げしても見にいっちゃう派ですね。

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