どうも、スタッフの竹森です。
今日の話は馬です。
僕は、小学生の頃、生まれて初めて馬にのりました。
その馬は一人乗りで、係員さんが誘導してくれたけど、とても高くて、乗ってみると、不安定で「怖い」という恐怖がありました。
係員さんが「安心していいよ、おとなしいから」といってゆっくりと誘導してくれたのを覚えています。
乗っていた馬も、まるで僕の気持ちを察するように、ゆっくりと歩きだしました。
その時、優しい瞳をした馬にまたがり、ゆっくりと牧場を一周したのです。
が!!馬に乗ることがちょっとトラウマになったのです。
だって高いし、怖いし、何考えてるか分からないし、いきなり走りだしたら間違いなく落ちてたっていう恐怖ばかり・・・
そんなトラウマを相変わらず抱えているのですが、「今度の題材は馬なんてどうよ」という無慈悲な鉄槌が下されてしまったので、まあ、「乗るわけでもないし」って気軽に書いてます。トラウマも克服したい気持ちもちょっとあるし・・・
暴れん坊将軍とか、西部劇とか、結構がっつり馬に乗ってる俳優さんいますからね。
あんなに乗りこなすには、どれくらい準備がいるんだろうか。映画ならこの人!!ということで、メンターの角間さんに聞いてみました。
疑問1 お芝居で馬って簡単に乗れるの?
・おなじみのプロフィール
角間進
劇団青俳出身。放浪記で森光子さんと10年以上共演。
かつての名優、志村喬の付き人を務めていて、黒澤明監督の映画にとても詳しい。
現在は舞台を中心に活躍中。
今日は「馬と俳優」について聞きにきました!
人間が入ってるほう?
入ってないほうです。
そうだね、じゃあ黒澤監督の時の話をしましょうか。
黒澤監督の映画の時、撮影前に必ず乗馬の訓練させられるんで、昔の俳優は、みんな馬乗れるんです。そして、ただ馬に乗るのが上手だけだと、芝居が成り立たない。馬に乗りながらきれいに演技ができて、初めて西部劇なんかが撮れるんです。クリントイーストウッドだってサマになるでしょう。だから馬に乗るときには「乗りなれている」という演技もいるんですよ。馬に乗れるスキルがあって、馬に乗りなれた演技ができて、かつセリフを言えるのが理想ですね。
馬のシーンで、すごいなって思うのは、名優、夏八木勲さんが「柳生一族の陰謀」で、馬に乗って城門から出てくるんです。槍を引っ提げて。馬に乗ってダダダダっと出てきて「うおおおお!」って敵を薙ぎ払うシーンがあるんですが、すごい技量がないと真似できないシーンですよ。落馬したら最悪の場合、命に関わりますから。また、隠し砦の三悪人なんかは馬上で両手で刀を振り上げるからね!昔の俳優さんの馬術は、みんなすごかったよ!ただものじゃなかった!
馬に乗って刀を振り上げるとか怖すぎる・・・
今はそこまで馬を操れる人は少ないと思いますよ。馬を使うとお金もかかるし。長い日にちレンタルすることになるので、コストとしても厳しい。
馬をその日のうちに連れてきて、「はい乗ってください」みたいな感じじゃないんですね。
絶対無理。そんな一期一会で、馬は言う事聞かないですよ。馬は利口だから、馬鹿にされちゃう。ちゃんとコミュニケーションをとって、何日も過ごして、やっとのせてくれると思いますよ。馬との信頼関係があるから、川の中にまで馬が入るシーンなどの撮影ができるんですよ。もちろん、馬のシーンだけスタントを使うことは多いですよ。映像でカット割りが入ったら、「スタントかな?」と思いますね。でも黒澤監督みたいな本物志向の場合は、俳優さんが本当に馬に乗ってましたよ。乗っているのが本人だとわかったほうが、見ている人は驚くからね。
なるほど、馬ってそう簡単に乗れないんですね・・・
結論
馬って格好よさそうにのるけど、実際にカッコよく乗るのは、俳優さんでも結構大変らしい。
疑問2 馬ってどうやって乗るの?
今度は、実際に乗るにはいくらかかるの?準備は?どのくらい練習するの?っていうのを馬専門家のこの方に聞きました。
関根令
乗馬用品販売の「エポック&エクイベース」代表取締役
6歳のころから清風会で馬について習っており、兄弟子に三船敏郎さんがいるすごい人。また乗馬連盟のB級所持いつもシナリオクラブの大舞台に観に来てくれる、馬の専門家!!
関根さん、いつもありがとうございます。今日は馬について聞きにきました!!乗馬って、始めるのにどんだけ準備いるんです?
おお?とうとう乗る気になった?ちなみに、お試しで乗りたいくらいなら、ジーパンにスニーカー、Tシャツで十分です。そこから本格的に始めるなら、ポロシャツが必須です。要するに、襟のついたものじゃないとダメですね。
いや、乗らないです。でも、Tシャツ、スニーカーOKなんですか!めっちゃカジュアル!!
日本で乗馬は大きく分けてウェスタンとブリティッシュ伝統日本馬術(流鏑馬など)に分かれてるんですよ。ブリティッシュスタイルは、襟があるシャツと、乗馬用パンツとロングブーツがないとダメなんですよ。ウェスタンはGパンにウェスタンブーツと何でもあり。アメリカンスタイルです。日本はウェスタンとブリティッシュが混在してますが、ブリティッシュが2/3くらいかな。乗馬クラブによって違います。でも、とりあえず、お試しで乗るよってときは、ブリティッシュでもさっきの服装で大丈夫ですよ。ただし、東京乗馬クラブと神戸乗馬クラブのような、格式高い伝統がある乗馬クラブは、お試し乗馬でもGパン不可と聞いています。
ブリティッシュ?ウェスタン?。馬って、競馬のイメージだったんですけど、違うんですか?
ブリティッシュの協議は大きく二つに分けると、障害馬術と馬場馬術に分かれていて、障害馬術の国際競技では150センチくらいのバーを10個以上飛びます。止まったり落としたりすると、点数が足されていく方式ですね。0点でスタートして、0点で帰ってくるのが最高得点。また、規定タイムがあって、0点同士の同率になることはあります。そうなると、障害が半分になり、スピード勝負の決勝になります。
関根さんはバリバリの競技者。
関根さんと愛馬のブリヂストンJr号。
知らなかった・・・・
馬術って、実は世界的にメジャーなスポーツなんですよ。ヨーロッパでは、サッカーに続いてなりたいスポーツ2位です。歴史の土台がありますからね。また、ゴルフのツアーみたいなのも行っているんです。ロレックスや、ボルボが主催していたり。優勝賞金は何千万や何億。で、競馬と同じように馬主がいます。馬主が競技者に馬を使ってくれと言うわけです。優勝したら、オーナーが何%というのが競馬に似てますね。
日本にそういったツアーがあればよかったんですけど、競技人口が少なかったから難しいですね。
賞金額がでかい!!ゴルフの世界ですね・・・ちなみに参考までに乗馬を始める費用はどれくらいかかるんですか?
乗馬を本気でやろうとすると、入会時に大体20万円とか、まあこれは乗馬クラブによるところもありますが。一回の乗馬で4千円くらいかな。そこにもろもろの経費がかかりますよ。
全然カジュアルな値段じゃなかった!!
備品を本格的に揃えると、乗馬のズボンは安いので1万以下、高いので3万くらいかな。昔の乗馬のジャケットは、セミオーダーかオーダーだったんで、10万とか20万とかかかってましたね。今は伸縮素材のジャケットで3万とか5万の世界です。
鞍なんかは、乗馬クラブの貸し鞍でいいんです。上手になった時に改めて買えばいいんですよ。鞍にも競技で種類はありますけど。また、試合に出るなら革製、もしくは合皮のブーツじゃないとだめで、それが10万くらい。20万くらいの靴もごろごろある世界なので、10万って安いです。でも、やってない人からすると、高く思えますよね。うちなんかは乗馬普及のためにもうちょっと安い価格で提供しています。
ブーツも色々な種類がある。
最低でも10万くらいはかかるんですね・・・本当にゴルフと同じような世界・・・そこまでお金かかる乗馬の世界とは・・・
馬の世界って、ものすごく奥が深いんですよ。馬術の法華津寛選手が、現在77歳です。でも「もっともっと、上手になる」とおっしゃるんですよ。性別や体力の衰えではなく、人間の成長が、馬術の上達に関係していると思っています。もちろん、初めてやるなら、若い人のほうが習得は早いかもしれませんが、年齢が上の方でも、本人のやる気があればできます。バランス、タイミングのコツがあって、飲み込みが早い人は上達が早いです。
馬と人間の成長って関係するんです?
馬術をするときの人と馬の関係は、親子の関係に近いんです。
例えば、馬を自分の思い通りにするために、けったり叩いたりするじゃないですか。そういうのって、とことんやれば馬も従うかもしれません。でも人間の子育てを思い出してください。赤ちゃんがずっと泣いてて、泣きやむまで叩くとか、ありえないじゃないですか。あやしたり、大丈夫かなって思いやったり。そういう経験がある人は、馬の乗りこなしが上手です。
また、馬って、目が横についているんですよ。なので人間が乗っている姿は、馬から丸見えなんです。人間側は見られているって思っていませんが、馬は人間をしっかり見て観察しているんです。馬が動かない時って、人間のことが分かっているんですよ。
関根さんが以前所有していた「モモタロウザムライ号」
つぶらな瞳は何でもお見通し。
難しいですね・・・・じゃあ、暴れん坊将軍のように馬を操れるようになるには、どれだけ練習すればいいんです?
暴れん坊将軍の場合はウェスタンかな。大体月3~4回通って、早い人で3ヶ月~半年、1年位かな。ただし、さっきも言ったように馬の世界って奥が深いので、どのレベルに合わせるかですね。また、馬って最初は40分くらいしか乗れないと思います。辛すぎて。
え、辛いんです?
最初は落馬の恐怖があるので、馬に乗ってるだけでインナーマッスルをとても使います。早足や駆け足をしなくてもね。リラックスするとバランスが取れないので、常に膝を締めて乗ります。すると体の疲れがすごくあるんですよ。もちろんインナーマッスルも鍛えられますけどね。
落馬はちょっとトラウマだわ・・・・落馬したことないけど、落ちそうな恐怖はわかる・・・
あと、乗馬のケガは、落馬が多いんですが、馬に噛まれることもあります。ただ、普通の馬は噛まないので、酷使された馬や、昔の競馬の馬は、人間に対して不信感があるので噛んできます。信頼があると甘噛みですが、本気で噛むと、指なんか軽く持っていかれちゃいます。僕も胸を噛まれたときに、肉までもっていかれましたよ。
怖い・・・乗馬って優雅に見えてめっちゃ怖い・・・
でも、6歳から続けてるけど、全く底が見えない奥の深さ、そして何歳からでも挑戦できて続けられ、男女の分け隔てなく参加できる競技が馬術の良いところですよ。もし、日本にツアーが存在していたら、僕もプロになっていましたよ。
そうなのか・・・
結論
馬術は準備に費用がかかる。そして暴れん坊将軍みたいに乗るのには一年くらい必要。
でも、馬を理解し、人馬一体で駆け巡る楽しさ、とてつもない奥深さが魅力らしい
・まとめ
映画で馬をめちゃくちゃ乗りこなしているけど、あれって結構大変らしい。相当な技術の馬術を伴ってやっとできるとのこと。そして、実際に乗馬を始めるのは金銭的にハードルが高い。でも何歳からでも始めることができて、生涯現役でいられるのも馬の魅力。肉体面の鍛錬じゃなく、精神面の鍛錬が重要なスポーツなので、年齢も性別も関係ない。
僕は乗馬はちょっとトラウマですが、お二人の話を聞いていると、馬と人間って交通手段や家畜など昔から密接な関係にあったそうです。今の移動手段はほぼ車に変わっていますが、昔は、犬みたいに身近な存在だったのかもしれません。金銭的に余裕がないと難しいかもしれませんが、乗馬は、普及してもいいんじゃないかと感じました。まあ、まだトラウマあるけどね・・・
ところで、「馬に乗る手配をしてくれ」と頼まれてるんだけど、いつ来るの?
えっ??
次回、どうやら馬に乗るかもしれません・・・・