映画制作裏話 その1 伝説の女優猫「みゃ~」

どうもスタッフの竹森です。

この前、編集技師、谷口登司夫さんの助手として、そして、シナリオクラブの理事長の幼馴染でもある逢坂依里佳さんに京都映画撮影所(現松竹撮影所)の話や、映画の裏側について聞いてみました。

逢坂依里佳さん

谷口登司夫氏は「座頭市」、「二人日和」、「利久」などの編集者ですが、当時私が助手を務めていた時は古谷一行さんの「金田一耕助シリーズ」や役所広司さんの「八丁堀捕物話」などにつかせてもらっていました。


映画の裏話や、京都映画撮影所など面白い話を聞かせてもらったのですが、1記事ではぶっちゃけ、書ききれません・・・


私はとっくに仕事を辞めていますので、撮影所の話と言っても、ずいぶんと昔の話になります。そうですね、撮影所にいた猫の話とかどうでしょう。猫といっても女優さんですよ。

・伝説の女優猫「みゃ~」


動物タレントって、今は志村動物園とか色々なところで見ますよね。芸達者な子たち。猫はあんまり見ないけど・・・


「みゃ~」は芸を教えたわけじゃないんです。元々、古谷一行さんの金田一耕助「迷路の花嫁」で血だまりの中で鳴いている何匹かの子猫がいたんです。その中の一匹が、その後、撮影所で飼われるようになったんです。

最初は、撮影所でみんなから可愛がられている白い猫だったんです。でもあるとき、「せっかく猫がいるなら撮影に使ってみる?」ということで、役者デビューです。


何も芸を教えてないのに、いきなりデビューってすごいですね・・・


それがね、まずカチンコ打っても逃げない。


カチンコ=映画で使うコレです。


カチンコを打つと、結構音がします。

でも目の前でカチンコ打っても逃げないなんて凄いでしょう。

また御家人斬九郎の時に「みゃ~」は結構登場しています。

いつも斬九郎の行きつけの居酒屋で飼われているのでサブレギュラーです。だから出演する自分のギャラで缶詰を買ってました。

ある回で居酒屋で斬九郎と対峙する侍のワンシーンワンカットのシーンがあったのですが、二人の真ん中に「みゃ~」がいるんです。でも全く逃げない。テスト撮影からずっといるしね。

役者さんから「本当に逃げないですね~」って関心されてました。


猫って、訓練するのがものすごい大変なのに、すごい名演ですね・・・


「みゃ~」をオープン撮影で、向こうから手前に歩かせるシーンがあったんです。花かつおを手前に置いて、「みゃ~」の誘導をしたら、思い描いたとおりの歩き方で、しかもカメラ目線で「みゃ~」がやってくるんです。

また、斬九郎が居酒屋にやってきて、戸口を開けると「みゃ~」が外に出ようとして、斬九郎が「みゃ~」を見つめて「みゃ~」が応えて斬九郎を見る場面があるんです。その時、猫なのに心の表情が出てるって言われてましたね。

仕事がない時は、撮影をしているセットに近づいてきて、「みゃん」って言いながら仕事くれよアピールもしてました。自分で仕事をとってきて、自分のギャラで缶詰を買う、本当に女優猫ですね・・・!真っ白な猫で、江戸には本当はいないんですけど。
「みゃ~」の写真。真っ白い大女優猫


本当に真っ白で美人さん!!ちなみに日常ではどんな感じだったんです?


野生の本能も持ってましたよ。

私がダビングに立ち会っていた時、美術部さんに呼び出されてスタッフルームにいくと、なんと「みゃ~」がスズメをくわえて見せにきてました。あと「みゃ~が依里佳さんのこと探してたよ。ハトくわえながら」ということもあり、スズメもハトも片づけたことがあります。(笑)

また、金田一シリーズの撮影の時、どうしても「みゃ~」のお気に入りのソファーを小道具で使うことになって、もっていったら、すごい怒って、制作部さんの三段ボックスの中に入ったまま出てこない。そんなこともありましたよ。

編集作業が始まったら、全く手を止めない私の師匠の谷口登司夫さんですら、編集室の前に来て「みゃ~」がみゃあと餌をねだると、手を止めてくれ、「みゃ~」に餌をあげるのを許してくれました。本当にみんなに愛されていましたね。大女優猫だったので、亡くなった時は社葬でしたね。日本で有名な美術監督さんや照明技師さんなど、様々な方が骨上げしてくれましたよ。その後、あれほどの天性の女優である猫を見たことがないですね。

・名優として語り継がれていく猫

世界の名優と呼ばれる渡辺謙さんと共演した、伝説の名女優猫「みゃ~」。

「みゃ~」のことは調べてみると、いくつかの記事がありました。逢坂さんに聞くと、「みゃ~のことなら、いくらでも話が出てくるよ」と言ってました。これからも伝説の名女優「みゃ~」は京都映画撮影所のスタッフの中で語り継がれていくのかもしれません。

というわけで、今後も映画の裏側について掲載していきます。

スタッフブログに戻る