前回にブログで、情報をどう発信するかというのに触れていなかったなと思い、今回はそれに関してのお話。
この公演を「時間もお金も払う価値がある」と思わせるにはどうしたらいいのか
どの劇団も、ここが一番のキモで難しいところです。
前回の話では「敷居を低くする」「絶対に面白いと思わせる」という話でしたが、前者はともかく、後者は「そんな簡単にできねーよ」って絶対になる。
知らないものを手に取らせるのはやっぱり難しいです。
よく言われるのが「SNS発信」や「動画での発信」なわけですが、これまた「やっているけど効果でねーよ」ってなります。
どうすればいいんだろう。
まずは前置きの話から。
前置きのお話、情報を読み取る力が落ちている現代人
前回のブログで話をした情報を読み取る力の不足について、
さて、ここからちょっと脱線です。情報過多な今の時代、分かりにくいメディアは毛嫌いされる傾向にあります。
その原因が二つほどありました。
一つ目が、情報量の増加と一人の人間が持つ時間の少なさ。
昔と比べて、スマホやネットの普及によって情報量が半端なく増えた。
それに伴い、情報の取捨選択が行われるようになり、こんなメディアも増えました。
・本を読まなくてもそれを書評として要約してくれる
・記事を分かりやすく発信してくれる
・動画でのHOWTOなど
一人あたりの一日の持ち時間が変わらないのに情報量が膨大に増えた。その結果、斜め読みすることが増えてきました。
これが「情報を読み取る力の低下、および、その能力は年齢と反比例」につながっていきます。
WEB動画クリエイターの大先生から聞いたお話ですが、
「情報を読み取る能力は年齢が下がるほど低下する」
「今の若年層は、新聞を読めない。なぜなら新聞って訓練しないと読めない」
ここ、ものすごく重要です。
年齢と情報をかみ砕く能力の関係
年齢と情報をかみ砕く能力についての前に、メディアごとの特徴。
新聞
1.情報が確実
2.決まった構成
3.基本は文字ベースの情報
4.確実性を重視し、情報が凝縮されている
ネットメディア
・情報の確実性は、媒体次第
・自由な構成
・構成が自由なので、文字でも画像でも漫画でもあり
・読みやすさ重視
新聞や本に慣れ親しんできた人は、パッと見で分からない新聞などの情報量をきっちり読み、把握する訓練ができています。
一方、斜め読みできるネットメディアは、パッと見ても内容がすぐわかるように作られている。
・新聞を読んで、情報を咀嚼することに慣れた人はネットメディアを読める。
・ネットメディア中心に読んでいた人は、新聞を読み解くのに苦労する。
という不可逆性があります。
総務省のHPからのデータによると、
基本的に、上の世代ほど新聞を読みますし、下の年代ほど、ソーシャルメディアやポータルサイトのニュースを見ます。
この差が情報を読み取る力の低下、および、その能力は年齢と反比例につながっていくのだと思います。
ここまでが前置き。
情報を読み取る能力は、フライヤーやSNS、動画にも影響
情報をかみ砕いて読み取る能力は、要は、「何が言いたいかを読んで理解する能力」でもあるわけで、
これってフライヤー、動画、SNSを見るときにも影響しています。
しかし現代人は情報を読み取る力がかなり落ちてきている。
さらにスマホやネットで忙しくて、いちいち文章や動画をじっくり飛んでる時間はほとんどない。
加えて、「URL開いたのに分からない」「動画みたけどつまらない」という経験を経て、騙され耐性もついてきてます。
つまり「わからないものをくどくど説明されるのをめっちゃ嫌がる」わけです。
となってくると、フライヤーや動画を魅力的にするには、
・「わかりやすい」は大前提
・「わかりやすい」は文章で説明じゃなくてほぼ直観、1秒くらいで分かるもの
・「わかりやすい」に加えて「興味を持たせる」が必須
この辺が最重要課題だなと思います。たとえインパクトを重視しても、興味を持ってもらわなければ集客につながりにくいので、ここが難しい。
「JOKER」なんかのキービジュアルは本当に上手いです。
「ヤバそう」「面白そう」インパクトと興味を持たせてる。
そして映画なんかは予告編を作るために、わざわざ予告用の別撮りをするくらい手が込んだことやってたりします。
2.5次元や、劇団四季の動画予告も、撮り方からみておそらく予告用に撮影しています。
予告用が撮影できなければ、「雪道コワイ」くらいのクオリティの動画を撮る。
この動画予告はまだ手付かずの劇団も多いので、ぜひやってほしいです。
余談ですが、動画はこれからどんどんと主流のメディアになっていくと思います。
何故なら、外で動画見ない理由は基本的にギガ数を食いすぎての通信制限かかるから。
無料Wi-Fiの発展などで通信制限を気にしなくなれば動画はもっと見られるようになる。
SNSは超重要
動画やフライヤーをわかりやすく、インパクトがあるものを作った後、今度はSNSでの発信です。
この情報化時代では「自分が信頼している人がオススメしているもの」は、非常に興味を持たれやすい。
ただし、ここはコントロールするのは難しいです。コントロールしようとするとステマになっちゃいますから。
現在はTwitterを含め、SNS個人の発信力ってバカにならない。
「失敗したくない」からSNSや口コミで評判を探すわけです。
そしてSNSと動画コンテンツは親和性が高い。
Twitterなら140文字だけど、動画で載せると情報量をより多く発信できる。
もちろん、ライバルも多いので動画発信するにしても、相当練りこまないとダメですが。
集客に楽な道は無しです。
余談、内容やテーマ性も情報をかみ砕く能力の低下の影響を受けるかも
最後に余談。
情報を読み取る能力の低下って、舞台のテーマ性や内容にも影響を与えているような気がします。
社会問題などのテーマを主軸にした演劇って、僕は嫌いじゃないけど、世の中から求められなくなってきたのかも。
その理由は、社会問題を主軸にした舞台は分かりにくくて敬遠されやすい。
これは、「社会問題のようなテーマは作品に不要」という話ではないです。
例えばメガヒット映画「JOKER」なんかは、その裏に貧困層の社会問題がテーマになってます。でも主軸は「優しい人間が悪のカリスマになっていくドラマ性」なわけです。
現代は演劇に求められる役割が変わってきたのかもしれない。
演劇はテレビが無い時代に、社会情勢を伝えるメディアという役割がありました。
そのため、昔の舞台は社会的なテーマを背負って上演されていました。
しかしテレビやネットがその役割を担い、そのテレビやネットの役割も娯楽に変わってきました。
舞台に求められているニーズも、同じように社会情勢からエンタメ性へと変わっているのではないかと。
古き良き演劇も好きですが、2.5次元や劇団四季がヒットを飛ばしているのもその辺りに一因があるんじゃないかなと思います。